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TORCH / S.T. / 1982

ギターにしてもボーカルにしても荒削りでエッヂのあるメタル。今で言うエピックメタルでもなく、もちろんスラッシュなんかでもない。ノーキーボード万歳、様式美クソくらえ、知ってる人は知っている、これぞホンモノの初期北欧メタル。NWOBHM影響下のリフとストレートなリズムに支配された各曲は、プロダクションの悪ささえも「アジ」があるように聞かせてしまう。5曲入りのミニアルバムが彼らのデビュー作であるが、熱いメタル魂がイヤと言うほど詰め込まれていてインパクトは十分だと思う。"Fire Raiser"と大作志向をうかがわせる"Pain"が理屈ぬきでカッコいい。
クサレポイント

本作はMausoleum Recordsからも"Fire Raiser"のタイトルでリリースされた。当時はオリジナルよりもMausoleum盤がよく流通していたけど、最近は見かけなくなりましたなぁ。



TORCH / S.T. / 1983

めでたくフルレンスアルバムのリリース、日本でもリリースされてさぞかし本人たちも嬉しかったろう。メンバーに変動はないが前作の荒削りさが良い意味で改善され、サウンドプロダクションも向上し改心の一作といった感のあるアルバムだ。前作のリ・レコーディングとなる"Beyond The Threshold Of Pain"や、本作のハイライトでもある"Battle Axe"以降のB面全ての曲など、聞きどころの多いアルバムだ。
クサレポイント

このジャケットのイラストは、バルハラからの女神をモチーフにしているとのこと。インパクトのあるアルバムジャケットは後々まで心に残るということを証明してくれる作品でもあるが、その点ではKING CRIMSOMのアルバムと同じだろうか(^^ゞ。「凍てついた北欧の自然は余りにも厳しい。生ける人の前に立ちふさがる自然の驚異。"たいまつ(トーチ)"をかかげた5人の戦士たちは勇猛にも戦いを挑んだ!!トーチは巨大な炎となって燃えさかる!!ヘヴィ・メタル・キッズ達よ彼らの、このパワー、スピード感に酔いたまえ!!」はオビのタタキ文句。「酔いたまえ!!」だよ、キッズ達!(^^ゞ



TORCH / Electrikiss / 1984

TORCHがJUDAS PRIEST化してしまった作品。でもそれはそれでカッコ良いから許せるが、アルバムジャケットはかなり損している思う。レコーディング環境か良くなってプロダクションが向上しても彼らのスピリットは変わらない。間違ってもマーケットに媚びた音は作らないという姿勢が音の隙間にチラホラしている。でないと素っ頓狂なコーラスや、バカでかくてバランスの悪い音を聞かせるギターリフなどを、これほどしつこく聞かせないだろう。こういうバンドは保護するべきだ。

クサレポイント

なかにはメジャーコードを使った明るめの曲もあるのだが、どう聞いてもコマーシャルな曲に聞こえないのは、電気イスに座ってる(^^ゞワイルドな声質のボーカル氏のなせる業であり、彼らの身に染みた「NWOBHMに負けない北欧メタル魂」であるように思う。心底いいバンドだったと思う。



220 VOLT / Mind Over Muscle / 1985

Page91でも紹介した「にひゃくにじゅうぼると」だが、本作は彼らの3rdアルバムで、写真のとおり日本でもリリースされた。実はデビュー作もリリースされているが、当時は「北欧メタル」という呪文があったにも関わらず、当時の日本では注目度ゼロな存在であった。デビューからコンスタントにコマーシャル化していった音楽性が彼らの特長だったけど、北欧メタル、という「いびつ」なカテゴリーのなかではこのバンドがアピールする部分が少なかったのがその理由だろう。しかし本作収録の"The Tower"はこの時代の北欧メタルでは間違いなくトップクラスの大名曲だ。この曲にガッツポーズをとれないヤツはいないだろう。他の曲がその水準と離れすぎているのが残念だが、この一曲があるから本作は人々の知らない闇の中でも光り輝いていたのだ。ついでながら、"Tower"といえばあのANGELとこの220 VOLT。それを憶えておいて損はない。

クサレポイント

しかし「北欧メタル伝説」という邦題は当時の爆笑ネタだった。各曲にも こんな邦題 。「墜落した夜」は飛行機に乗る前には聞きたくないね(^^ゞ。



TOUBLE / Warrior / 1985

この一枚で消えてしまったスウェーデンの4人組。噂ではオクラ入り音源が残っているらしい。1985年というリリースの割には1980年前後の初期北欧メタルな音であり、すなわちNWOBHMやブリティッシュロックのエッセンスを感じる作品だ。全編ではないが、ところどころで顔を出す、「ツインリードってのはいいねぇ」と感じさせるメロディが素晴らしい。とくに"Don't Blame It On Me"が屈指のデキ。どこかで聞いたような歌メロが聞き手の琴線をくすぐるのだ。

クサレポイント

UNIVERSEあたりのバンドに共通な、レコードプレイヤーの回転数を間違えたかのような鼻づまりのオヤジ声が初期北欧メタルのニオイをプンプンさせる。デビューがあと5年早ければ彼らの歴史も変わっていただろう。