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VIRGIN STEELE / S.T. / 1982

ニューヨークのバンドのはずなのに、ヨーロッパ大陸型の中世的クラシカルな様式メロディで劇的に幕を開ける本作は、元々フランスのTRUSTのメンバーでもあったギタリストのJack Starrの趣味丸出しな作品であり、彼らはとてもアメリカのバンドとは思えないルックスとサウンドを持ったメタルバンドだった。自主制作音源が元になっているのでお世辞にも音は良いとはいえないが、それがまた荒々しくて良い。本国よりも英国で名を上げたことがこのバンドの勲章だろうし、日本でもこのデビューアルバムはそこそこ話題になった。実は明るめのメロディも時折顔を出すので、一枚丸ごとが中世的メロディに覆われているわけではないのだが、あまりにオッサンくさいルックスはともかく、初期のRAINBOWやURIAH HEEPに影響を受けたJackのギターから流れるフレーズだけは徹底して中世的な「様式」(「様式美」ではない)を追求していた。4オクターブ出ると言われたボーカルは、落ち着いて聞けば単なる素っ頓狂野郎だったりするが、ヒステリックなパワーは感じる。

クサレポイント

英国ではMusic For Nationsの第一号レコードであったが、国内では当時プログレッシヴ・ロックのみをリリースするレーベルであったネクサスレコードからリリース。こちらもレーベルとしては初めてリリースされた海外のメタルバンドのアルバムだった。



VIRGIN STEELE / Guardians Of The Flame / 1983

しかしバンド名が"STEEL"じゃなくて"STEELE"なのがシャレてるねぇ。相変わらずヨーロッパ大陸系のクサさを漂わせたアルバム。ボーカルメロディがやや明るめな展開を見せようとしているが、ギターソロが始まれば元通りのクサさである。1stアルバムのインパクトが凄かっただけに本作はややおとなしめな印象を受けるが、Jack Starrの世界はそのまんまなので安心して聞くことはできる。劇的展開を見せる"The Redeemer"は聞きごたえのある名曲だ。

クサレポイント

ボーカルの素っ頓狂度がやや下がったのは良いのだが、やはりボーカルに表現力のなさを感じる。4オクターブもいらないから、低音をしっかり歌って欲しいもんだ。



VIRGIN STEELE / Noble Savage / 1985

なんと前作リリース後にバンド創始者のJack Starrがバンドを追い出される形で脱退、それじゃもうこのバンドが存在する意味がないじゃないかと思ってたところにリリースされた3rdアルバム。ボーカルはディオ唱法に変化し、ギターリフ中心のパワーメタルに変身。Jack Starrのカゲすら感じさせない本作は、それまでのバンドイメージに固執せず新しいものを作り上げていこうとする意気込みが表れたという点で評価できる。しか〜し、ありがちなパワーメタルになってしまったことは否めない。悪くないけど毎日聞くこともない、といった出来栄え。

クサレポイント

しかしなによりも当時驚いたのはこのジャケットだった。バンドのロゴマークも物足りないものになってしまった。本作リリース後しばらく音沙汰はなかったがすぐに復活、現在もバンドは活動を続けているが1st、2ndのバンドロゴマークは使われることがなくなってしまったのが残念。



HOLOCAUST / Live ( Hot Curry & Wine) / 1983

デビュー作の"The Nightcomers"リリース後の地元エジンバラでのライヴを収めた2ndアルバム。70年代後半から活動を続けてシングル盤も多くリリースしていたNWOBHMのバンドで、ライヴでも定評のあった人たちだ。バンド名のイメージでゴリゴリなメタルかと思われがちだが、ロックンロールなリズムを基調としたノリのよいメロディと、ドロドロしたギターリフが不思議に絡むユニークなハードロック。後にMETALLICAがカバーした"The Small Hours"、名曲"Heavy Metal Mania"を収録。

クサレポイント

その"Heavy Metal Mania"はシングル盤のテイクもクールだが、このライヴテイクもなかなかカッコ良い。何といってもタイトルが素晴らしい(笑)。



NU / Fuego / 1983

デビュー作はプログレッシヴロックの分野で語られることも多いが、あの作品だって十分ハードロックだ。乱暴に言えばモーターヘッドがキング・クリムゾンをカバーしたらこうなった、という作品だった。本作は3rdアルバムにあたるが当時のスペインではハードロックがブームであり、彼らもさらにハードロック路線で突き進みはじめたころの作品だ。ハモンドオルガンも終始登場する。押しのパワーと泣きのメロディ、Jose Carlos Molinaの熱いボーカルとが見事にマッチした痛快なハードロックアルバム。いやぁ、いいもの聞いたという充実感が得られる一枚だ。

クサレポイント

フルートを持ったボーカリストといえば英国ではJETHRO TULLのIan Anderson、日本ではブルー・コメッツの井上忠夫さん^^;、スペインではこのNUのリーダー、Jose Carlos Molinaである。彼の「唾飛ばしフルート」のソロはライヴでも大好評だ。