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BERND STEIDL / Pycho Acoustic Overture / 1991

世界中の早弾きギタリストを独占せんとばかりに、とにかく早弾きメタルギタリストばかりスカウトするShrapnel Recordsが1991年に世に送り出したギタリストは、アコースティック界のイングウェイとも言うべきBernd Steidlだった。そりゃもうとにかくアコースティックギターのみを狂ったように弾きまくる弾きまくる。全曲インストでピアノやシンセを使って劇的な世界観を打ち出していて、さすがShrapnel、こういう異色なものもリリースするのはかなりユニークだ。ミュート気味に疾走するギターソロの音階は日本人に通ずる「侘び・寂び」すら感じさせ、イングウェイというよりは、その祖先たるAl Di Meolaからの影響を感じずにはおれない。最初は笑っちゃうが、聞き込んでいくと頭が下がります。

クサレポイント

ドイツ人だった彼はアメリカでギタリストとしての腕を磨き、本作でデビューした後も更なるステップアップを遂げて現在も活躍中だ。



ELIXIR / Lethal Potion / 1988

Page58でも紹介したNWOBHM魂を持ったバンド。本作は、もともとは1988年に"Sovereign Remedy"のタイトルでレコーディングされた音源で、ミックスを変えて1990年にリリースした彼らの2ndアルバム。タイトルチューンとなるはずだった"Sovereign Remedy"と続く"Llagaeran"の熱いブリティッシュハードロック魂はとにかくお見事、この2曲だけでこの作品は存在する価値があるだろう。ほかにも泣きのツインリードと英国のバンドらしい湿り気に満ちたコーラスのハモリは全編に渡って響き渡っているから一度は聞いておきたい快作だ。

クサレポイント

ドラムスはヘルプ加入した元IRON MAIDENのClive Burr。本人はスタジオでちょこっと叩いただけという印象だったらしいが、ちゃっかりとメンバーとしてクレジットされていて驚いた、という話を聞いたことがある。



BRIAR / Crown Of Thorns / 1988

NWOBHM後期に活動を開始、若く見えるけど苦労人な人たちの3rdアルバムで、めでたくメジャーからのリリースとなった。レコード会社の売り込みの戦略だろうけど、とにかくハードポップでキャピキャピ(死語?)なイメージがつきまとったアルバムだった。「ラ・バンバ」をアレンジしてカバーしてしまったのは本人たちの希望だったのかどうかは分からないが、注目は浴びることになり、日本でもリリースされ、当時のレンタルレコード屋さんには必ず置いてあった作品となった。しかしこのジャケットといい、Special ThanksにOzzy OsbourneやBruce Dickinson、Lemmyの名があることといい、イメージと音とが ちょいとちぐはぐであったのも事実。ラストの"Fart"は文字通り「屁」の音のみが収められているが、なんじゃいこれは^^;

クサレポイント

このジャケットの少年が、泣きも笑いもしていない表情であるのが象徴的だと思う。バンドがこの路線に満足していなかったんじゃなかろうか。バンドのオリジナリティもとくに見出されなかった本作は悲しいことに時間が経って中古屋の常連となったのだ。



JACK STARR'S BURNING STARR / No Turning Back ! / 1986

VIRGIN STEELEのギタリストとしてギターに己の世界の全てを託して表現していた彼があっけなくバンドを去り、ゴージャスな友人たちと少し毛色の違うソロアルバムを製作し、ついでにTHRASHERプロジェクトにも顔を出した後に本腰を入れて自らのプロジェクトバンドを立ち上げたのがこのJACK STARR'S BURNING STARR。しかしなんて分かりやすい名前なんだろう^^;。
で、そのJSBSの2ndアルバムが本作だが、VIRGIN STEELE以降の彼の作品のなかでは一番よく聞いた作品だ。ギターソロが実に力強く、ヒステリックにギュイーンと切り込むアーミングに涙。そしてそのメロディは期待通りにクサい。そこには職人気質のこだわりがヒシヒシと感じられるのだ。"Prelude In C Minor"に始まり"Coda"で幕を閉じるまでの間、一直線なメタルを叩きつけるB面が素晴らしい。

クサレポイント

Mike Edwardsのドラミングもダイナミックだが、Mike Terrelliのパワフルなハイトーンボーカルも強烈。Jackがまた今のバンド名を変えるときはJACK STARR'S NO TURNING BACK! 、にして欲しいものだ^^;



INTRINSIC / S.T. / 1988

パッと見て発音しにくいバンド名といいチープなジャケットといい、ありがちなアメリカンスラッシュか何かかと思わせておきながら、針を落として聞えてくるのは、IRON MAIDENを思わせる正統派なパワーメタル。ドラムスのスカスカ感は仕方ないにしても、演奏テクの高さを感じるリズム隊もギターも、アーパーな(これまた死語?) ごきげんさんアメリカンメタルとは明らかに違うメロディ持っている。初めて聞いてもなんだか聞いたことのあるメロディだし、次はどうなるんだろうという興味を駆りたたせられて全部聞いてしまうという魔力を持った作品だ。

クサレポイント

本作のみで消えていったバンドだが、もっと評価されるべきバンドだろう。1996年に突如2ndアルバムを日本でのみリリースして再び消えた。