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SPITFIRE / First Strike / 1986

戦闘機の名に由来するこのバンド名はヨーロッパ中に同名のバンドがいくつかあるが、PICTUREのアルバムを想起させるジャケットの本作はギリシャのバンドのデビューアルバム。ギリシャのバンドって実に堂々と正統派なメタルを聞かせてくれるバンドが多いというイメージがあるが、このバンドもその仲間のひとつだと言える。ギターのリフを中心にして、次の展開が期待通りに進んだところに期待通りのギターソロが絡むというメタルのお手本。少し鼻にかかったようなドイツチックなボーカルもユニーク。工夫に工夫を重ね、音に音を重ねすぎて結局何が演りたかったのか分からないようなメタルよりは、こういうメタルの方が聞いていて疲れない。

クサレポイント

リリース直後にリードボーカリストが事故のため引退、バンドは早々に解散の危機に見舞われたがふんばって活動を続け、いまだ現役のようである。



HIGHWAY CHILE / Storybook Heroes / 1983

NWOBHM型のストレートなハードロックを聞かせるバンド。しかし何といっても二人のギタリストが奏でる泣き泣きのツインリードがタテノリであってもミドルテンポであっても聞き手の心を捉えて離さない。トップの"The Fever"と"Headbangers"でギターはメロメロなのである。バンドタイトルの"Highway Chile"はツボを押さえた疾走チューンなのでダッチメタルのファンでなくても必聴。

クサレポイント

ギタリストのBen BlaaumとドラムスのErnst Van Eeは翌年に脱退し、これまたダッチメタルにその名を残すHELLOISEを結成。後のアルバムで本作収録の"Carol"をカバーしている。



HIGHWAY CHILE / For The Wild And Lonely / 1984

ということでギターとドラムスが交代してのアルバムだが、A面全部に共通する、この打ち込みのようなドラムスの音はちょっと辛い。ビート感は結構だが、疾走感がまるでなくなっている。ギターは相変わらず泣いてくれるものの、これじゃ別のバンドの作品のようだ。しかしB面ではそれが一転して元の荒々しいハードロックが顔を出す。B面はまだErnst Van Eeのドラムスだったころの音なのかも。

クサレポイント

Armand Vander Stigchelのワイルドでラフなボーカルスタイルはそのフラつき具合が危なっかしいが、実はこのバンドの演奏には合っていたように思う。しか〜し、彼もこの後バンドを去ってしまうのであった。



HIGHWAY CHILE / Rockarama / 1985

新ボーカルにPage22でも紹介した元MARSEILLEのSav Pearseが加入、キーボードをフューチャーしてかなりメロディアスでハードポップなバンドに変身した。Sav Pearseは定評ある巧いボーカリストなので聞いていても快適だが、バンドがこの方向へ進んでしまったのは当時少し残念に思った。結局は1stアルバムの泣き泣き具合はHELLOISEに引き継がれたということなのだろう。

クサレポイント

本作後長く沈黙していたが、何とErnst Van EeがHELLOISEと同時進行的にHIGHWAY CHILEを再興させ、ソロアーティストとしてもマイペースで活動を続けているようだ。



OLE / This Ole Town / 1987

「オレ」の「このオレの街」というアルバム、と覚えやすい作品(笑)。Ole Evenrudはノルウェーのアーティストだが、いわゆる北欧くささは微塵もなく、ひたすらにバカ明るいメインストリーム型のハードロック。時折聞かせる日本の歌謡曲にも通ずるメロディやくっさ〜いバラードも収録されていて、単にバカ明るいといってもそのへんはアメリカ大陸の人たちとは生まれ持った琴線が違うことを証明している。メロディック派には期待を裏切らない。個人的には"X-Ray Specs"が印象に残った。

クサレポイント

ソロアルバムだが、演奏陣に元SWEETのAndy Scottと今は亡きMick Tuckerの名があった。本作に収められた"X-Ray Specs"は後のANDY SCOTT'S SWEETでカバーされている。