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PANDEMONIUM / Heavy Metal Soldiers / 1983

初期Metal Bladeからのリリースゆえの音の極悪さ、それに負けないぐらいテクのないドロンとよどんだ演奏、しかしメタルマニアには感じることができる燃えたぎる熱い熱いメタル魂がこもった楽曲。この当時はクズ扱いだったのは、あちこちにメタルの情熱が溢れていて、このバンドまでフォローする余裕がなかったからだろうか。しか〜し今聞けば演奏のヘナヘナぶりと音の隙間に見え隠れする魂のギャップが大きければ大きいほど涙のツブも大きくなるという典型的な見本なのだ。タイトルチューンはどんな手を尽くしても一度は聞くべし。ただし寛容なマニア限定。うすっぺらなようで奥深い音だという先入観^^;が必要だ。

クサレポイント

アラスカ出身のResch3兄弟により興されたバンド。アラスカといっても決してエスキモーな格好してるわけではない。



PANDEMONIUM / Hole In The Sky / 1985

B!誌のレビューでジャケ写を見たときに、おおPANDEMONIUMの2ndだ!と驚いた1枚。良くも悪くもこんなアーティストが国内の雑誌に載るなんて、というのが正直な印象だった。当時、イタリアのDEEP PURPLEと言われたVANADIUMとその名を混同して、こちらはアラスカのPANADIUMだと思っていた友人がいたのも懐かしい話。
前作と同じレーベルからのリリースでも2年経つとこうも音質向上しますか、てなぐらい聞きやすいサウンドに仕上がっていて、さらにバンドそのものもパワフルになり、より大陸向けなメロディラインが印象的だ。万人ウケはけっこうだが、ややAC/DCっぽくなってしまったか?というところはちょっと残念。

クサレポイント

この後本格的にアメリカ本土へ進出し、さらに洗練されて、でもジャケットはロクでもない3rdアルバムをリリース。こちらはPage12で紹介済みだ。



ZEBRA / S.T. / 1983

3人組でありながら無限にメロディアスでテクニカルな演奏ぶりはカナダのバンドかと思わせる。ハイトーンなボーカルやスペイシーな部分はあのRUSHを想起させるが、ZEBRAのメロディはもっと分かりやすくて直接的だ。というのもプログレなニオイを漂わせる曲の次に平気でごきげんさんなロックンロールが組み込まれているあたり、アルバムの流れに難解な部分がなく、つまりはストレートであり何の魂胆もない。それも並みならない演奏力があるからこそ駄作に終わらないともいえる。"Who's Behind The Door?"がスマッシュヒット、この曲もボーカルのハイトーンとスペイシーな演奏がかみ合った実に味わい深いハードロックだ。

クサレポイント

アイドルのようなルックスをそのままジャケットにしたデビュー作から21年、いまでもご活躍だがルックスは音楽には関係あるまい。



ZEBRA / No Tellin' Lies / 1984

バンド名、ホントは「ゼブラ」じゃなくて「ジーブラ」と発音するのだけど、新発明のブラジャーみたいに聞えてしまうからだろうか^^;、日本盤ではやはり「ゼブラ・セカンド」のタイトルで発売されていた。1曲目がスペイシーなツェッペリンみたいでいきなりカッコ良い。前作以上にハイトーンになっているRandyのノドも凄いが、サウンドそのものが骨太になったような気がする。それがまたその路線のままじゃなくてトップテンチャートっぽいハードポップも飛び出てくるコンテンツは、よく言えば多彩、悪く言えば節操がない。でもこの音楽を嫌いという人はいないだろうなという音作りはさすがである。日本盤もリリースされたのにいまひとつヒットしなかったけど覚えてる人は少なくないだろう。懐かしい80年代アメリカンハードロックのニオイがプンプンしている。

クサレポイント

"Lullaby"のようなブリティッシュ・ポップっぽい泣きのバラードが自然と溶け込んでいるのがこのバンドの魅力だろう。しみじみとしていて、これは実にいい曲だ。ハードロック一直線じゃなくて、少し余裕でハードロックを聞きたいときにはうってつけのアーティストだ。



ZEBRA / 3.V / 1986

良くも悪くも洗練され過ぎてしまった彼らの3rdアルバム。時代に迎合した感でいっぱいの作風は、それでも決して水準以下などではなく、優秀なアメリカンハードロックの一作品に間違いないのだが、前々作、前作に見られた器用貧乏な充実感はあまり感じない作品である。Randyのハイトーンもやや後退気味。さらにはジャケットから感じるイメージがそういう印象に拍車を掛けているのかもしれない。スペイシーではないキラキラなキーボードが前に出ているからだろうか、曲そのものは奥行きを感じるのだけど、音が良すぎて戸惑うのだ。ギターワークは依然として素晴らしく、"Better Not Call"のような熱い曲もある。バンドとしては2ndアルバムよりもリキを入れた作品だそうだが、個人的には当時ちょっとがっかりした彼らの新作だった。

クサレポイント

この作品以降、アルバム製作を停止するがバンドは継続、90年代になってライヴアルバムのリリースとともに本格的に復活していまだ現役。