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LEATHERWOLF / S.T. / 1987

1987年にリリースされたアメリカ産のバンドの作品の中でも特筆すべき名作である。ボンジョヴィやらガンズやらにうつつをぬかしていたシーンにあって、ここまで正統派を貫いたメロディに涙したマニアも多かった。驚くべきはこれがLA出身のバンドによって作られたものということであろう。トリプルギターをバックにのしかかるブ厚いコーラス、ツボを押さえた流暢なリードギター、それらの要素が一番のウリでもあるニクいまでに琴線を刺激するメロディをさらに盛り立てている。VICIOUS RUMOURSから低音コーラスを抜き、難解でないプログレの要素を少しまぶしたかのような音。こういう音には先天的に真っ先に反応を示す国であるこの日本では"Rise Or Fall"がバカウケだったが、本国では続く"The Calling"で彼らは一躍有名になった。

クサレポイント

デビューミニアルバムに続いてのフルレンスアルバムだったが、あまりにインパクトがありすぎて後の作品がかすんでしまった。ボーカリストをRACER XのJeff Martinに変えて今も活動中



ADX / Weird Visions / 1990

フランスの数あるクサレメタルの一バンドがドイツのノイズからリリースした、「フランスを飛び出して英語でアルバム作ってしまいました」な5thアルバム。ある程度は洗練された音作りではあるが、もともとメタルマニアのツボを刺激する才能にあふれたバンドなのだから、ガチ〜ッとキマった硬い演奏の中にも驚きのカッコよさはちらちらとその色を見せている。彼らのことを単に「スラッシュ」と紹介すると、そのクサメロディが隠れてしまうので遠慮しとこう。アナログは全10曲だが、CDには"Kill The King"のカバーが収録されていたようだ。

クサレポイント

本作以前に4作品を母国のみに残し、そのクサいメロディがなかなかお耳にかかれない作品としても名高かったのだが、どうやら次々とCD化されているらしい。えらい世の中になったもんですなぁ。



MAYDAY / Revenge / 1982

ここからあとの3作品は「アメカナロック」にも載せたのだが、もう少し書いておきたくて蔵出してみることにした。てことで3作品ともメロハー御用達なアルバムなので、その筋のマニアには是非一度は試してもらいたい。
さて本作はヘヴィメタルのアルバムジャケットを大量に紹介したドレミ楽譜出版のあの本にも掲載されていた作品。ジャケットはお馴染みだったけど音を知らなくて、一度は聞いてみたくてあちこちのレコード屋を探し回った思い出がある。憂いあるギターのメロディラインとそれを効果的にする厚いコーラスが特徴のアメリカンハードロックだが、すべての曲が良いわけではなくてAORチックな曲もあるが、ともかくはタイトルチューンを聞いてノックアウトしていただきたい。「リベ〜ンジッ」とコーラスと一緒に揺れるメロディはかなりハートに突き刺さることだろう。

クサレポイント

リードボーカルのSteve Johnstadは、後にLOUDNESSの"Hurricane Eyes"アルバムにゲスト参加している。どういうつながりがあったんだろうねぇ。



SURRENDER / S.T. / 1979

全体のトーンは西海岸のバンドかと錯覚する優雅さを持っていてかなりメロディアス、間違ってもメタルには入らない音だ。しかしこれは素晴らしいアルバムなのである。SURRENDERはイタリア生まれでカナダ育ちのAlfie Zappacostaの、プロミュージシャンとしての最初のバンドであり、彼の輝かしいボーカリストとしてのキャリアの原点でもあるのだ。前述のようにかなりメロディアスな音作りだが、甘いだけでなく"Turn Down The Mission"のようなハードロックも自然とアルバムに溶け込んでいるのがSURRENDERの魅力だろう。少しプログレで少しハードロック、それらをZappacostaが器用に歌い上げてつなぎ合わせている。そのZappacostaの相棒でありバンドの要でもあったギタリストのSteve Jensenの力量もその「仕掛け」となっていることは、心が安らぐ名バラード"Nicole"を始めとして随所に登場する彼のアーシーでエモーショナルなギターソロが物語っている。こういうアルバムを楽しめる余裕が自分にあることはすこし自慢したい、そんな一枚。

クサレポイント

ユニークなジャケットだが、意味不明。しかし 裏ジャケでちょっと判明^^;



SURRENDER / No Surrender / 1982

Alfie Zappacosta、Steve Jensen、Paul Delaneyとメンバーが3人となっての2作目は4曲入りのミニアルバムとなった。のびのびと歌い上げるZappacostaのノドは素晴らしく、それがゆえにSURRENDER名義ながらソロアルバム的な印象もある。Steveのギターが前作ほどは前に出ていないのがちょっと残念。"Start Again"は本作から2年後と22年後(!)に二度セルフカバーされている。きっと彼にとって大事な作品なんだろう。メンバーに変動はなかったが、次のアルバムではバンド名はZAPPACOSTAに改められた。こちらはPage141参照。SURRENDERから長い年月が経ち、過去の作品を大事にしながらも彼はソロシンガーとしていまも活躍中だ。

クサレポイント

SURRENDERのこの2枚の作品はカップリングされ、ボーナストラックを入れてCDフォーマットで復刻された。機会があれば一度お聞きになることを強くオススメする。