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MARTIN KOUBEK / Thrill Of Love / 1994

Martin Koubekはチェコの80年代の今や伝説的なハードロックバンドであるDUXを率いていたギタリスト。彼がアメリカ人のミュージシャンの助けを得て、DUX名義とソロ名義の半々の形でリリースしたのが本作だ。彼が抱える黒のカスタムからは、これでもかといわんばかりにギンギンでツボを得たギターソロが飛んでくる。その後ろを固めるガッツ丸出しで重量感あふれるベースラインもクールだ。全体のバランスも良く、とにかく「カッコよいってのはこういう展開」を理屈なしに耳に叩きつけてくれる作品だ。ハモンドオルガンをバックに、とにかく弾きまくるギターがエゲつない2曲目が必聴。こんなオッサン、西側に(というのはもう古い表現だけれど)知られずに埋もれておくのは実にもったいない。

クサレポイント

ジミヘンの名曲、"Spanish Castle Magic"のカバーも光り輝いている。とにかく熱いハードロックが好きだというメッセージで溢れた好作品だ。



HAWK / S.T. /1986

Metal Methodからリリースされた、野太くストレートながらマイナーっぽさを十分に感じさせる作品。時折ドイツ臭いメロディをもちらつかせるが彼らはアメリカのバンドだ。リフを中心としたメロディとボトムの効いたリズムはカッコいい路線をひた走っている。あとは器用・不器用の話になるのだが、彼らは愛すべき不器用ハードロックだ。そしてなによりもこのディオとクラウス・マイネを足して5倍に薄めたかのようなDavid Fefortの声質がいい。彼はこの後Alex Masiのアルバムなどでも歌っているようだ。このヘンテコなジャケットは典型的なマイナーメタルの証でもあるので賞賛しておこう。

クサレポイント

ほかのメンバーもなかなかのツワモノ揃い、リーダーは同レーベルのギター講師でもあるDoug Marks、幸運にもGUNS N' ROSESに加入してハッピーになれた(笑)Matt Sorum、その前任があのScott Travisだったりするのだ。しかし得てして後にビッグネームらなる人たちの出発点はマイナーだったりするという掟に正しく従っている。



GRAND PRIX / S.T. / 1980

「知っているのにグランプリ〜♪」という定番のシャレでお馴染みの(ウソウソ^^;)イギリスを代表する良心的で健康的なハードロック。いや、イヤミじゃなくてこういうメロディアスなハードロックってのは、イギリスという国だからこそハートに訴えかける力を持っていると言えるのかもしれない。パッと聞いた感じではアメリカンハードロックっぽい音作りだが、ギターの音使いやメロディの湿り気は間違いなく英国人にしみついたものだ。でしゃばり過ぎないハモンドオルガンの音色も耳障りよいが、カナダ人であるBernie Shawのボーカルとバックのコーラスワークとがよく絡み合っているのが印象的。"Day In The Life"のような「難解でないプログレ」な展開が魅力だ。

クサレポイント

日本でもリリースされた本作は邦題が「デッド・ヒート」、たたき文句は「ツェッペリンの再来と騒がれている」云々でこりゃちょっと見当違いだろう。ハードポップな佳曲"Feel Like I Do"はめでたく シングルカット



GRAND PRIX / There For None To See / 1982

2ndアルバムレコーディング中にBernie Shawはバンドを脱退、代わりには、Robin Mcauley(当時のライナーノーツには「ロビン・マコーレイ」と表記されていた^^;)が加入した。Robinは加入直後にMSGからもバンドへの加入のオファーがあったのだけど、GRAND PRIXの方がいい、ということで見事に断っている。まだ無名の青年だった彼のノドはBernieとはまた違ったアジを持っている。巧さではBernieに軍配があがるだろうけど、エモーショナル度ではRobinの方がアピールする部分が多い。バックの演奏陣はますます貫禄&余裕でプログレ色も強めたメロディックロックに進化している。

クサレポイント

本作の半分ほど吹き込んでいたBernie Shawは脱退してPRAYING MANTIS〜STRATUSのボーカリストとなった。後にURIAH HEEPのフロントマンになり、現在も活躍中だ。



GRAND PRIX / Samurai / 1983

1曲目がメロディの希薄な曲だったもんだから、変わってしまったのか!と驚愕した記憶がある作品。2曲目以降は従来どおりのメロディアス路線で一安心。ますますアメリカン産業ロックっぽくなったところもある。GRAND PRIXの中では一番知られたジャケットでありタイトルだ。しかしジャケットから受ける勇ましいようなイメージではなく、常にメロディアスでポップな感覚を持ちながら、実は各パートともテクニカルで存在感のある、芸の細かい演奏をしていたのがこのバンドの特徴だった。それをさらっと聞かせてしまうのが凄いところなのかもしれない。疾走しながら泣くギターとキーボード、語るように歌うRobinのノドが聴きもののタイトルチューンは必聴の1曲。本作リリース後にバンドは残念ながら解散。この後、Robinは一度は断ったMichael Schenkerと仕事をすることに決め、McAuley Schenker Groupを立ち上げた。

クサレポイント

他のメンバーでは、バンドの要として流麗なキーボードを聞かせたPhil LanzonはMausoleum RecordsからアルバムリリースすることになるGMTの前身OPERATORを経てURIAH HEEPに加入、ここでBernie Shawと再会している。バンド創設者のRalf Hoodは元UFO〜BANZAIのDANNY PEYRONELが結成したTARZENに参加した。