Page 151


KICK / Heartland / 1987

何に蹴りを入れたかったのだろうか、分かりやすいバンド名だ。ちなみにHeartlandがバンド名ではないので混同に注意。元TEN YEARS AFTER、元MSGといった人たちが元MAGNUM、元WHITESNAKEの人たちの助けを得て作った作品で、良くも悪くも「元」のなす余裕が音に表れている。ZZ TOPありSURVIVORありといった具合で節操ないサウンドが微笑ましい、オジサンたちでもできるんだよという感じのキーボード入りメロディックハードロック。タイトルチューンは聞きごたえあり。

クサレポイント

リーダーはTEN YEARS AFTERのベーシストだったLeo Lyons。このバンドでたいした成功は収められず、結局はTEN YEARS AFTERを再結成してしまうのだった。



SHERIFF / S.T. / 1982

ドンくさそうなルックスから想像のつかない、実に正統派で硬いメロディ。一番良い時代のアメリカンロックの王道を行くような、難解な部分を一切取り払ったSTYX、という感じのサウンドだ。この伸びやかなボーカルには一点の曇りもよどみもなく、それにつられるかのごとく、バックのギターも実に伸び伸びと弾きまくっている。こういうバンドにバラードをやらせたらたまらないものが出来るのはなるほどなわけで、"When I'm With You"は全米トップのヒットとなった。もちろんリフを固めたストレートなハードロックもあるのでいろいろなサウンドを楽しめる好作品だ。

クサレポイント

そのヒットはリリース後6年もたってからのもの。そのころにはバンドは解散していたというのもかわいそうな話だ。その後残ったメンバーはALIASとFROZEN GHOSTとに分かれて活動を続けた。



KiLLeR DWaRfS / S.T. / 1983

カナダでも息の長いバンドとなったKILLER DWARFS(正式にはタイトルのとおり大文字と小文字とが入り乱れている)のデビュー作はリフがヘヴィーで生々しい音だ。カナダのバンドはZEPPELINからの影響を感じさせるものが多いが、本作もそのひとつに上げられるだろう。うねるベースラインが実にクールで、一筋縄でいかないブリティッシュロックを思わせる曲構成が印象的。下手すると「どれも同じに聞えてしまう」という危険性も、こういう曲の構成が見事にそれを防いでくれている。この後はもう少し聞きやすいサウンドに変化するが、このデビュー作はいつまでも私のお気に入りの一枚なのである。

クサレポイント

バンドメンバーの名にはデビュー当時から"Russ Dwarf"、Mike Dwarf"などなど、全員にDrwarf(こびと)がつくお茶目ぶり。とはいえ大柄な人もいたはずだ。



SATAN / Court In The Act / 1983

元BLITZKRIEGのリードボーカルでAVENGERに在籍していたBrian RossはSATANのボーカルだったIan Davison Swiftと入れ替わりにこのSATANに加入したことはPage120でも触れたが、その彼がSATAN在籍時に残したアルバムが本作。大爆音に始まる"Trial By Fire"の、バカバカしいほどまでにひたむきで一直線、琴線をナタでザクザク切るがごとくの勢いを感じるメタル魂はNWOBHM随一だし、次々と流れる強引すぎる大音量ツインリードとそのメロディのクサさはこのバンドにしか生み出すことのできないものだ。そんな豪快で強引な音にBrianの声がハマっているのがエゲつなく素晴らしい。"Break Free"ではじまるB面はとにかく失神失禁。NWOBHMバイブルとして一家に3枚。

クサレポイント

当時Neatからもリリースされていたと思うが、Neat盤は塩化ビニールの質が悪くてプチプチ(「ニキビ」といわれるヤツ)が多く、かなりのブチブチ音の中で聞いた思い出があるのだ。



BLITZKRIEG / A Time Of Changes / 1985

しかしながら上記の作品のみでBrianは追い出され(ルックスでダメ出しされたそうだ^^;)、またもやNWOBHMの渡り鳥となってしまう。Page74のとおり、プロデュース業に転身しLONE WOLFを世に送り出すが気がつけば自分がバンドのボーカルの座に座っているという節操のなさ。そのうちソロアルバムの準備〜リリースにこぎつけるが、その時の作品を自分の最初のキャリアであったBLITZKRIEGの名義としてリリースしたのが本作だった。Steve Ramseyという天才ギターがいたSATANはBrianのノド以外にも勢い満点で聞かせどころが満載のアルバムを残したし、Brianが去った後も聞き応えのある作品を残しているが、BLITZKRIEGのメインはやはりBrianのノドだろう。オープニングにSEを使うのはSATANと同じだが、勢いで負けている分、メロディはこちらのほうが聞きやすく、耳に残りやすい。もともと初期に作られた曲が基本になっているから、NWOBHMな雰囲気も十分に楽しめる。カッコいい リフを知っているアーティストが作る作品はいつの時代でも聞き手にガッツポーズを作らせてしまうことを教えてくれる作品だ。やはりNWOBHMのバイブルとして一家に3枚。
クサレポイント

Brianは今でもBLITZKRIEGのフロントマンとして・・・と思いきや、今年のWACKENではSATANのフロントマンとしてステージにたったそうだ。SATANは自分のバンドではないのに、相変わらず節操ないなぁ^^;