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HALLOWEEN / Don't Metal With Evil / 1984

デトロイト出身のカルトメタル4人組、デビュー作である本作はそのタイトルが何だか笑える。"Detroit's Heavy Metal Horror Show"の肩書きどおりにホラーなメイクをしてシアトリカルなステージングで名をはせたバンドである。オドロオドロしいリズムの中にあってもそのメロディは実に正統派なアメリカンパワーメタル。ボトムの効いたリズム隊の上を流れる強引でスピーディーなギターソロとハイトーンなボーカルがたまらない。こういうバンドはアルバムよりもきっとステージが数段カッコ良いはずだ。

クサレポイント

2004年の時点でいまだ現役。もちろんドイツのスペル違いのHELLOWEENとは何の関係もないが、こちらのアメリカのハロウィンを先に知っておけば英語のテストでの綴りミスもしないだろう(笑)。



WILD DOGS / Reign Of Terror / 1987

アメリカンパワーメタルの代表格が残した名作。日本盤もリリースされたが、「暴虐の暁」という邦題にいたく感激したもんだ。とにかく全曲すべて剛速球ストレートで重くて速い。このへんはスラッシュのようなスカスカさとは全く違うリズムなのだ。AORチックなソロボーカリストだったマイケル・ファーロングが本作から加入しており、見事に変貌を遂げたそのワイルドな声質が素晴らしい。さらには若き日のディーン・カストロ信夫、もとい、カストロノヴォの千手観音な、文字通り若さにまかせたドラミングが聞きモノだ。手数も音量もハンパでなくて、タイコが悲鳴をあげそうなビートも強烈だが、無数のロールやオカズの塊がちゃんとリズムに乗っかっていることに驚きを覚える。その代表曲でもある"Psychoradio"で悶絶。

クサレポイント

ディーン・カストロノヴォはその後ハードロック界を渡り歩くドラマーとなったが、なんでもいまはJOURNEYにいるらしい。ツーバスで"Don't Stop Believin'"を演るつもりなのか!?^^;



TORANAGA / Gods Gift / 1990

Page39で紹介したバンドのメジャーデビュー作。前作は総予算13万円で作られたというだけあって、生録り丸出しの荒削りな音に良い意味でハラハラさせられて、結果的にそれが聞き手のハートをつかんでいた部分があったが、本作は実に退屈なアルバムになってしまった感がある。メロディにしても個々のプレイにしても工夫が足りず、全曲通して聴くのが辛い。SATANの最終形であるPARIAHを10倍に薄めたような出来栄え。

クサレポイント

BLIND GUARDIANの作品かと思うようなジャケットだが、このアートが一番のハイライトになってしまった感じのアルバムだ。



DRIVE, SHE SAID / S.T. / 1989

Al Fritschと元TOUCHのMark Mangoldとのユニットとして結成されたバンド。余裕たっぷりの優れたAOR〜メロディックハードなアルバムで、立て続けに上の3枚みたいのを聞いた後なんかには実にホッとさせられる作品だ(笑)。ギターとキーボードが中心だがでしゃばりすぎずにメロディを大事にしている。Al Fritshはなかなか歌える人で、こういうゆったりとした音の中で力強くメロディを表現できる力を持っていると感じる。

クサレポイント

TOUCH時代のヒット曲で「愛は謎のストーリー」というアジャパーな邦題がついていた"Don't You Know What Love Is"を再録 (タイトルは"Don't You Know"となっている) しているが、こちらも原曲に忠実に、そしてさらに盛り上げたテイクになっていて聴き応えがある。



BRIGHTON ROCK / Young And Free / 1987

カナダのメロディックハード。アメリカのこのテのバンドになるとバカ明るいだけで何も残らないところがあって好きになれないのだが、このバンドにはやはりどこかカナダのバンドが持つニオイを感じる。メロディックで流麗なメロディの中にマイナーコードをまぶして憂いをにじみだしているサウンドだ。そのメロディを歌うハスキーで濁りのあるボーカルは逞しさを感じさせると同時に枯れた味わいも感じさせてくれる。ギターの音も少しユニークだし、Michael Wagenerのプロデュースも見事。小説にヒントを得てつけられたというこのバンド名も、初めて聞いたときはカッコいいなぁと思ったのだ。

クサレポイント

この当時平均年齢が22歳だった彼らも当然ながらトシをとるわけだが、いまでもバンドは存在しているようだ。でもきっと当時と変わらないロックスピリットだということは間違いないだろう。