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ASSASSIN / The Upcoming Terror / 1987

ドイツのスラッシュというのはTANKARDやKREATORなどもそうだが、重々しさと凄みと、とにかくバカみたいに速い、というイメージがある。このASSASSINも基本はとにかく笑えるほど速いのだが、時折リズムがチェンジしてギターがザクザクと刻むときなんかは意外なことにカッコ良い。バンドアンセム的な"Assassin"には中期メタリカのニオイを感じる。「どひゃ〜っ! どわ〜っ!!」と言っているようにしか聞えないボーカルは音から汗が飛び出てきそうな勢いだ。音処理がユニークなアルバムなのでヘッドホンで聞くことをオススメする。

クサレポイント

彼らの初期の曲でもある"Holy Terror"が本作でもハイライトだろう。リズムが崩れかかるなかでも自分以外の音は聞えないといわんばかりのボーカル、突然にその存在感を示さんと弾きまくるギター、展開というよりももう次のコードが分からないという感じの曲構成。しかし崩壊せずに、スレスレのところでカッコよく収まっていることが驚きだ。



ASSASSIN / Interstellar Experience / 1988

ギターとドラムスがチェンジ、前作よりもさらにタチが悪いジャケットになっての2ndアルバム。もちろん前作のド根性スラッシュ路線であるがアンプを変えたとかでカラッと乾いた音になっている。てことで悪いなりに生々しかった前作のノリは意図的に抑えられているので、聞いていても耳にひっかからないスラッシュであり、ちょっと物足りなさを感じるのだ。とはいえ壊れそうで全然壊れない曲構成は相変わらず見事で、それを表現するテクニックに翳りはない。とくに新しいドラムスはかなりの腕前と見た。ベンチャーズの"Pipeline"をカバーしているが、オフザケであるだろうけどこれが実にツボにはまる良いアレンジだ。本作後、3rdアルバムのデモテープが製作されたがリリースされることはなくバンドは解散したが、2001年になって復活したようだ。ギターは後にSODOMに加入している。

クサレポイント

ラストに収録の"Baka"はホントに「馬鹿」って意味を表しているらしい。硬いスラッシュが全速でリズムを刻んだ後、サビのコーラスブレイクで皆んなで「バカッ!」。これはかなり笑える名曲なのだ。



WITCHFINDER GENERAL / Friends Of Hell / 1983

BLACK SABBATH系列の音で知られるNWOBHMの2ndアルバム。なるほどボーカルのトーンや各曲のイントロのリフなどはかなりBLACK SABBATHだが、似ているだけでなくて、憂いの中にもメロディアスな部分をほんのちょっと持ち込もうとする彼ら独特のノリも感じられる。ギターソロの時の音の薄ささえ計算ずくと思わせるような世界だ。聞くべきは音の質よりも曲の質。名曲"Music"、"Friends Of Hell"を収録、他にも一筋縄では語れない、毒のあるメロディが満載な名作。

クサレポイント

オネエちゃんなジャケットが好きなバンド、というイメージがあるので、バンド名がWITCHFYNDEに似ているが区別出来ている(笑)。



AFTER HOURS / Take Off / 1988

Mark Thompton-SmithやMark Owens、Steve Owensといった人たちにより結成された英国のメロディックハード。MSGのAndy Nyeも在籍していたが唯一リリースされた作品である本作には彼らのクレジットはなく、メンバーが流動的だったことが想像できる。JOURNEYをお手本にしたような、伸びやかでメロディアスな曲がズラリとならんでいて、中にはバカ明るすぎるメロディとキラキラなキーボードサウンドにウンザリさせられる曲も数曲あるものの、メロディックハードなアルバムとして平均点は軽くクリアしている作品だ。たいていの曲で聞ける泣きのギターを聞くと、英国のバンドが聞かせるメロディはアメリカンハードに似せて作っても必ず独特な湿り気をあちこちの音符に忍ばせているんだなぁと感じる。さらにそれを精一杯盛り上げているJohn Francisのノドも印象的だ。

クサレポイント

ストーンズの"Paint It Black"をカバーしているが、これがまたここまで劇的に泣きを入れたメロディにするのかと思うほど自分たちの音に仕上げているのがお見事。しかし何もこの曲でなくても、と思ったりもするのだ(^^ゞ。



STRATUS / Throwing Shapes / 1984

GRAND PRIXのBernie Shawが加わった末期PRAYING MANTISに元IRON MAIDENのClive Burrが加入し、バンド名を数回変えて日本のCBSソニーと契約しリリースしたデビュー作。Bernie Shawいわくは「JOURNEYを目指した」そうだが、JOURNEYよりはもっとポップなサウンドに仕上がっている。PRAYING MANTISにメジャーコードを多用してところどころバカ明るくしたような印象だ。歌メロが十分ポップな上に、Tino Troyが弾いているんだとすぐに分かる泣き泣きのギターソロは湿り気満点といった具合で、AFTER HOURS同様、英国のバンドというのは演奏そのものに憂いがしみついているんだろうと感じさせる。ラストの"So Tired"はポップになる前の彼らの音、といった感じのストレートなハードロックだ。

クサレポイント

個人的には苦労人ベテランバンドなイメージがあるのだが、ポップな曲調もさることながら裏ジャケの アイドルさながらのメンバーショットにはちょっと苦笑い(^^ゞ。Clive Burrが可愛い(笑)。