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HOLY MOSES / The New Machine Of Liechtenstein / 1989

で、でましたHOLY MOSES!、といった表現がピッタリな、ドイツが世界に誇る正統派パワー〜スラッシュメタルなバンド。なんといっても女性ボーカルでありながらダミ声のインパクトが強烈なSabina Classenの存在感が凄い。それはバンドの中における存在感のみならず、それを縮図としてジャーマンスラッシュシーンにおいてこのバンドが示す存在感にもつながっている。かなりテクニカルな人たちで、ひたすら突っ走るSODOMやTANKARDといったスラッシュとは違い、クールな感じが漂うあたりはMEKONG DELTAの世界に近いかも。そしてその名をマニアの心に刻めておけたのは、速い中にもちゃんとメロディも聞かせる、ニクいまでに考え抜かれた曲構成の成功にあるのだ。個人的にはデビュー作から3rdになる本作あたりまでがお気に入り。スコスコなスネアと骨太なバスドラのコントラストがユニークで恐ろしく手数の多いドラムを聞かせる青年は、いまやドイツの渡り鳥ドラマーとなっているUli Kuschだ。

クサレポイント

Sabina嬢はなんといっても当時のメタル界随一といえるくらいの美人でありました、ホント。いまもなんと現役だけど、ずいぶんと怖いルックスになってます(^^ゞ



TITAN FORCE / S.T. / 1989

Flores三兄弟が興したバンドにJAG PANZERのボーカルであったハリー・"タイラント"テッキンコンキン・コンクリンが加わってのデビュー作。パワーメタルとテクニカルメタルの中間を行く音作りで、難し過ぎない程度に割り込んでくる変拍子が印象的で、テクニカルメタルは苦手だなぁ、という貴兄の耳にも受け入れられるノリだ。特にリズム隊は鉄壁の完成度といっていいだろう。肝心のハリーの声は、アメリカのカルトメタルを渡り歩いてきた割にはやや細く、パワー不足な感じがする。このへんは好き嫌いあるところだろう。B面の方がテンションの張り具合が圧倒的に高く、聞いていても熱くなれる。

クサレポイント

ハリー・コンクリンといえば、RIOTに短期間在籍したらしいが、そのイメージが全然掴めないのだ。ライヴなどやってたんだろうかねぇ。その後はSATAN'S HOSTのフロントマンとなったが、その時はLeviathan Thisirenと名乗らされていた。



MANIA / Wizard Of The Lost Kingdom / 1988

正統派なジャーマンパワーメタルのデビューミニアルバム。ドカスカとツーバスでカッコよく曲が始まっても、ドイツが誇るあのえげつなくクサいメロディをガマンできずにギターソロあたりから臭いメロディを弾くわ弾くわで、聞き手も嬉しい笑みで頬の筋肉が痛いのだ。"Muffty's Arrival"で始まって"Muffty's Departure"で終わるという構成までクサい。NWOBHMからの影響も感じさせる一枚。

クサレポイント

ん、Mufftyって何だろう。ジャケットのウインクな鬼のことだろうか。ラストは曲じゃなくて、彼が笑い声とともに去る音になっているのだ。



MANIA / Changing Times / 1989

同じメンバーで製作されたフルレンスアルバム。"Turn Toward The Light"〜"No Way Back"の並びはトリ肌。前作同様に疾走系ジャーマンメタルの本当に良い部分が濃縮されている、見逃せない一枚。SCORPIONS、ACCEPTが放つドイツ演歌、TRANCEが聞かせた危なっかしいボーカル、RUNNING WILDが持つ大合唱系クサクサメロディ、HELLOWEENが築き上げた泣きながら疾走するメロディ、こういう要素はこんなバンドにも染み付いているのだ。

クサレポイント

ジャケットデザインは後にBLIND GUARDIANやHAMMERFALL、PEGAZUS(2ndと3rdよ(^^ゞ)といったバンドのジャケットを手がけるAndreas Marschall。ちゃんと鬼さんも 小さく描かれている(笑)。



M.A.R.S. / Project Driver / 1986

元はRudy SarzoとTommy Aldridgeが立ち上げた「DRIVER」が基礎になっている。しかし大物ゆえにメンバーは固定せず、彼ら自身も次のバンドを立ち上げる計画を持ったりとかなり複雑な状況下、このバンドと呼べないバンドは最終的にTony MacAlpineと当時無名のRob Rockを加え、本作限りのプロジェクトと定義され、その名を彼らの名前の頭文字から「M.A.R.S.」としてリリースされた。今から考えると豪華なメンツで内容も悪いはずはなく、メロディアスなハードロックがずらりと並ぶ佳作だ。プロデューサーはShrapnel RecordsのMike Varney、それはTony MacAlpineの絡みもあるのだろう。一聴で彼のギターだと分かる音は本作でも堪能できる。

クサレポイント

てことでバンド名はDRIVERなのかM.A.R.S.なのか。日本盤では「DRIVER」として紹介されたが、本作リリース時は「M.A.R.S.」が正解のようだ。