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DESTINY / Atomic Winter / 1988

スウェーデンのバンドだが先週のTITAN FORCEと同じUS Metal Recordsからリリースされた彼らの2ndアルバム。こちらもデキの良いパワーメタルだ。ギターがザクザクとリフを刻み、時折ハモンドオルガンを絡めながらリズム隊と一緒に転がるようにスピードを上げていくメロディの快感はこのバンドが聞かせるメタルにたくさん詰め込まれているのだ。オープニングの"Bermuda"でのメロディラインはこのバンドのオリジナリティを強く示している。オヤジ声ながらヌケのよい声質のZenny Hanssonのボーカルはハマるとクセになるだろう。デビュー作の再録となった"Spellbreaker"も一聴の価値あり。捨て曲ほとんどなし。

クサレポイント

その後もベーシストがバンドを守り、現役としてバリバリに活動中。ずっとイメージを守っているこのバンド、頑張って欲しいもんだ。



AGENT STEEL / Skeptics Apocalypse / 1985

"The Calling"に続く"Agent Of Steel"はアメリカが生んだスピードメタルの名曲として今もピッカピカに輝いている。サビになるとついつい歌ってしまう「えーじぇんとっ、すてぃぃぃぃ〜あぁぁ〜っ!!」、ボーカルのJohn Cyriisのノドは私らの合唱を遠く置き去りにしてしまうぐらいにハイトーンなのだ。当時はGeoff Tateよりも彼のほうが衝撃的だった。どの曲もヨーロッパのバンドを思わせる正確なリフのリズムに包まれながらもテクニカルメタルにありがちな緻密な計算くささはここにはなくて、激しいリズムの中で何を感じるかというとスバリ、「ひたむきさ」なのである。音自体がガッツポーズしている。この曲以降もバンドの熱いメロディは最後まで冷めることはない。John CyriisとギターのJuan Garciaは元ABOTTOIRのメンバー。Metal Blade Recordsのオムニバス、Metal Massacreでも熱いノドとギターを聞かせてくれている。

クサレポイント

この名曲を後にイタリアのSHADOWS OF STEELがカバー、善戦しているもののやはりオーラが足りないのだ。



AGENT STEEL / Unstoppable Force / 1987

一枚のミニアルバムをはさんでリリースされた2ndフルレンスアルバム。メインとなるボーカルとギター以外のメンバーは一新されている。本作もまたオープニングタイトルチューンが全開フルスロットルな剛速球メタルで、前作のひたむきさがテクニックの向上とともにパワーアップしている。そしてまたまたサビになるとついつい歌ってしまう「あん、すとっぱぼぅ、ふぉぉぉぉ〜っすっ!!」、実に痛快なスピードメタルなのだ。日本盤でもリリースされ、かなり話題を集めた。当時のキャッチフレーズが「一撃必殺!」、これはまさに言い得ている。ボーナストラックとしてミニアルバムに収録されていたJUDAS PRIESTの"The Ripper"を収録。数あるJUDAS PRIESTのカバーの中でも屈指のデキだ。

クサレポイント

この後残念ながら結局解散。けれども最近になってJuan Garciaを中心として再結成されているようだ。



FATE / A Matter Of Attitude / 1987

アメリカンツアーで、ピンク色のギターと白の短パンという格好でステージに立ったためにKing Diamondのひんしゅくを買ったHank Shermanは結局そのままKingと袂を分かち、MERCYFUL FATEは一度幕を降ろした。そのHankが立ち上げたのがバンド名も「MERCYFUL」を抜いたこのFATEだったのだが、実は音楽性の全ても抜いていて、ファンは腰を抜かした。MERCYFUL FATEがあんなに独特の世界観を持って濃い音だったのに、FATEはキラキラポップな歌謡曲なバンドだったからだ。そのFATEの2ndで日本でのデビュー作が本作だが、1stアルバムにも増してメジャー調で明るく正しい、Hankのギターも楽しめるメロディックロックに仕上げている。ヒットシングルになった"Won't Stop"はどこの国のアイドルかと思うような曲だ。しかしここまで思い切って180度違う音楽性で作品が仕上げられるってことは裏返せば才能が実に豊富だということだ。この作品を愛せるかどうか以前に、ハンパじゃなく突き進んだ姿勢は評価できるだろう。そんな本作の邦題は「運命の翼」。こ、これはイカンだろう(^^ゞ。

クサレポイント

この後FATEでの活動に満足したのか身にしみたメロディは抜けきらなかったのか、脱退してPage117に載せたZOSER MEZを経て彼は元のサヤへ戻るのであった。



LIONHEART / Hot Tonight / 1984

Dennis Stratton、Steve Mann、Rocky Newtonという優秀なミュージシャンが屋台骨を支えていたバンド。NWOBHMのシーンの狭さから、IRON MAIDENやPRAYING MANTISといったバンドのファミリーツリーには必ず登場するバンドだが、残したアルバムは結局アメリカでレコーディングし大手からリリースした本作だけだった。初期のころにはNWOBHMを代表するようなリフを聞かせていた彼らだったので、この作品のオープニングに象徴されるAORチックで甘ったるいサックスのメロディを聞くにつれ、こりゃどうしたもんだと当時は嘆いたもんだ。とはいえ英国バンドお得意の明るい中にも憂いあるメロディは伺うことが出来る質の高いアルバムではある。状況が許さなかったことを考えつつも出来れはもう少し早い時期にも一枚アルバムが残せていれば言うことなしだった。

クサレポイント

SteveとRockyはこの後MSGに引き抜かれてしまい、バンドはストップしてしまった。日本では良い反応のあった作品だしいかにも英国のバンドといった感じだったから残念なことだ。