Page 160


V.A. / X-Mas Project / 1987

時節柄こういうジャケットを飾るのもよいもんです(笑)。1985年リリースのミニアルバムに1986年に新録した4曲を加えて8曲のアルバムスタイルでリリースされた作品で、クリスマスのスタンダードナンバーをスラッシーなジャーマンメタルにアレンジした、早いモン勝ち的アイデアな企画アルバムだ。当時はマイナーアーティストだった人たちがレコーディングに参加している。
Jorg Michael (Drums) RAGE
Peavy Wagner (Vocals) RAGE
Frank Fricke (Guitars) LIVING DEATH
Bjorn Eklund (Bass) MEKONG DELTA
Rainer Kelch (Guitars) LIVING DEATH
Thorsten "Toto" Bergmann (Vocals) LIVING DEATH
Andre Chapalier (Bass) HOLY MOSES
Axel Rudi Pell (Guitars) STEELER
Thomas Eder (Guitars) STEELER
Martin Bork (Bass) LIONS BREED
Sabina Classen (Vocals) HOLY MOSES
Reent Froehlich (Vocals) FACT
今じゃそこそこ名の通った人もいますなぁ。全曲ドイツ語、酔っ払ったまんまでレコーディングしたような曲が半分、まともに取り組んだものが半分、といった感じ。こんな作品でよくリリースするなぁと感じる曲があるかと思えば、欧州の民謡メロディとジャーマンメタルの持つメロディが見事にマッチした聴き応えのある曲もあるから始末が悪い。

クサレポイント

誰もが知っている「ジングル・ベル」の本作バージョンは傑作。Totoのボーカルがねちっこくで凄い。笑いを狙ったのか、「うえっへっへっへ〜」と唸る合いの手も最高。



MALICE / Crazy In The Night / 1989

Page130でも紹介した「アメリカからのJUDAS PRIESTへの回答」と呼ばれたバンドのラストリリースとなったミニアルバム。アルバムといってもどうやら過去音源を集めただけのもので、4曲しかないところもかなり欲求不満度の高い作品である。クレジットではそう書かれていないが、オリジナルボーカルであるJames Nealの声ではなく、Paul SabuやMark Weitzが歌っている曲もあったりして、たとえば、決して悪い曲ではないがこのバンドには不似合いと思われるメロディアスハードな曲"Vice Versa"は、前年に劇場公開されたコメディ映画の挿入歌としてPaul Sabuがプロデュースし自ら歌っていると思われる曲なのだ。

クサレポイント

この作品リリース以前までが彼らのピークだったんだろう、この後はバンドの名を聞くことはなくなってしまった。ギターのJay Reynoldsは本作と前後してMEGADETHに加入、現在はMETAL CHURCHで活動中だ。



RAT ATTACK / S.T. / 1983

ハワイのメタルにはハズレがない、というのは自分なりに感じているところだが、このRAT ATTACKもそれに反することなく、ストレートでバカ正直なまでに熱いメタルを聞かせてくれる。疾走感に満ちたメロディの上でツインリード編成がクサクサなメロディ、時にはクラシカルなものも絡めて垂れ流すという鉄則をしっかり守っていて、これに合格点を与えなければメタラーとしてどうするのだ、といった内容。リードギタリスト兼ボーカルのTom Azevadoは後にHAWAIIに加入しMarty Friedmanの相棒となる人物だ。音の良し悪しは二の次三の次、とにかく音に表れた魂の熱さを感じて欲しい。

クサレポイント

オリジナルは1983年リリースだが写真のレコードは1998年の復刻盤。インクがすごく多いジャケットは粗悪だが中身は最高。



QUARTZ / Live Quartz / 1980

NWOBHMの大人のメタル部の部長、という感じがするバンド。1977年、BLACK SABBATHのTony Iommiに見出されてのデビューであり、正確にはNWOBHMの波によって息を吹き返したバンドという感じだ。1979年のバーミンガムでのライヴを収めた本作ではデビュー作からの曲が中心で、演奏ぶりは実に生々しくパワフル、70年代のブリティッシュロックの血統書を見せつけているような感じがするのだ。もともとタイトルになる予定だったB面トップの"Count Dracula"(邦題は「ドラキュラ伯爵」)と続く"Around & Around"はその典型、Mick Hopkinsのギターが縦横無尽に空を飛んでいて圧巻だ。

クサレポイント

しかし、ラストに"Roll Over Beethoven"をカバー。これはちょいと余計だったか。彼らはMOUNTAINが好きだったようなので、マネでもしたのだろうか。



SPELLBOUND / Breaking The Spell / 1984

スウェーデンでSonet Recordsからアルバムをリリースしているということなら、かなり「北欧メタル」な音になっているんだろうと勝手に思い込んでいたらすっとこどっこい、これがアメリカンなメロディアスハードロックのような展開を聞かせるのだ。バカ陽気なわけではなく、ヘヴィなところもあるのだが、一聴で感じさせる北欧クサさはない。しかしもちろん平均点以上のハードロックであり、ボーカルはパワフルだし演奏テクも問題なし。その中でピカッと輝く曲もあるわけで、"Crack Up The Sky"、これは北欧メタルとNWOBHMとをうまくミックスさせたような疾走チューン。「クラック、アップ!」ってキメがカッコいいんだわ〜。当時は本作ではこの曲ばかり聞いていました(笑)。

クサレポイント

もう一枚アルバムを残してバンドは解散、ボーカルのHans FrobergはTHE FLOWER KINGSのフロントマンとして、ギターのJ.J.MarshはGlenn Hughesのバンドのギタリストとして活動中だそうだ。