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THOR / S.T. / 1987

スペインの4人組パワーメタル、ジャケットデザインの脱力感はアルバムを聞けばかなり回復する。JUDAS PRIESTやACCEPTといったバンドからの影響大なリフが実にパワフルな真っ当なヘヴィメタル。あれやこれやとこねくり回す理屈っぽい音ではなくて、火の玉が真っすぐに飛んでくるような音だ。同じスペインのバンドで同型なOBUSやMUROに比べるとその力が若干弱いかなと感じるのは、ヘロヘロなボーカルとコーラスのせいなのだが、熱いメタルの魂は十分に宿っている愛すべきアルバムなのだ。

クサレポイント

オリジナル盤はレアものらしいバンド。次作とカップリングでリプロ盤がリリースされるのも納得だ。



THOR / Mata A La Bestia / 1989

前作路線を曲げずに真っすぐ突き進んだ2ndアルバム。クッサクサのメロディがやや初期HELLOWEENっぽいところもあるが、彼らとてJUDAS PRIESTから影響を受けているのだから元は同じなのだ。ああそうか、ボーカルが相変わらずの素っ頓狂でオンチだから初期HELLOWEENと感じるのかもしれない(笑)。いずれにしてもスパニッシュメタルのクサレ裏名盤として聞かないでおくてはないだろう。IRON MAIDENっぽい大作志向の"Kamikaze"はカッコいいインスト曲。

クサレポイント

本作もまたレア盤だが、きっとこのジャケットもマニアの心をくすぐるのだろう。しかしヒドい絵だ(笑)。



SORTILEGE / S.T. / 1983

Page104でも紹介したフランスのパワーメタル、本作はデビュー作となった5曲入りミニアルバム。低音から盛り上げてハイトーンにつなげる、ボーカルの逞しい歌いっぷりにはこちらのメタル魂がいやでも熱くなる。もちろんバックの演奏陣も負けずにパワフルに琴線をくすぐるメロディをこれでもかと叩きつけている。とくにツインリード編成のギターが実に印象的なフレーズを聞かせる。収録曲も捨て曲なし。3連とツーバスを交互に聞かせる曲をオープニングにもってくることのニクさといったらたまらないのだ。5曲というのもテンションが切れずに一気に聞ける適度な長さ。バンドアンセムの"Soltilege"はそれらの魅力が詰まった名曲だ。

クサレポイント

こちらも長らく幻の一品だったけど、しっかりとAxe KillerからCD復刻されている。ボーナストラック入りだから買うとしたらそちらだろう。



PANZER / Sabado Negro / 1987

Page17で紹介したPANZERのラスト作が1987年にマドリッドで行われたライヴを収めたこのアルバムだった。PANZERがいかにスペインで人気があったかは、本作でのオーディエンスの反応を聞けば分かるだろう。アナログ世代でない人たちにはガマンできないだろうなぁと思うくらい非常に音の悪い作品だが、それゆえにオーバーダブでないことも明らかで、とにかくお客が歌う歌う、また歌う。おそらくは男性がほとんどだろうお客たちは開演前から歌っているような勢いだ。それに負けずとメタルの熱を放射するバンドのテンションが下がらない。PANZERがホンモノのライヴバンドであることを証明する好作品である。"Dios Del Rock"、"Panzer"などなど、名作目白押し。

クサレポイント

しかし、ロクにインターバルも置かずに次々とパワーメタルを聞かせてくれるメンバーも凄いが、お客が最後まで完全にコーラスを食ってしまっているのがやっぱり凄い。恐るべし、スペインのメタルマニアたち。



INTRUDER / A Higher Form Of Killing / 1989

ドえらいジャケットの"Live To Die"でデビューしたスラッシュメタルの2ndアルバム。近未来の毒ガス戦争をイメージした本作のジャケットは、そういう危機に警鐘を鳴らす意図があるらしい。スラッシュといってもひたすらスピード化したノイズに身を置くコアなスラッシュではなく、聞きやすいメロディ、メロディのあるギターソロからしてもパワーメタルとスラッシュの中間という感じがする音だ。

クサレポイント

彼らがユニークなスラッシュだなぁと思うのは、MONKEESの"Steppin Stone"をカバーしているところ。この曲のスラッシュバージョンってのは、ASSASSINの"Pipeline"と同じくらい笑える。