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A.N.D. / 100 Hours / 1988

イギリスのメロディックハードの私的名盤。英国のバンドが持つメロディって、どんな風に憂い湿っているかを知りたかったら本作を聞くのが近道だ。キラキラポップな派手さはなく、かといってドロドロに暗いわけではない。自然とハードロックをやっているワケで時にはAORな曲、時には早弾きなんかも出てくるのだが、この独特のメロディの泣き具合が琴線をいやというほどくすぐるのだ。リードボーカルでギタリストのPaul MayとベーシストのPete Emmsの音楽的才能の高さを十分に感じつつ、"Stone In Love"や"Time Will Tell"、"Mystic Lady"、その他のどの曲でも、このハスキーなボーカルと泣き泣きにハモるギターのメロディはハマると抜けられない。ゲスト参加のPaul Hodsonのキーボードも哀愁味満点。大勢でなく、自分一人だけでそっと聞きたい必携盤。

クサレポイント

Paul Hodsonは次作でもプレイした後、Bob CatleyのバンドであるHARD RAINに参加。Peter MayとPete Emmsは後にJUDAS PRIESTのオリジナルボーカリストAl Atkinsと数枚のアルバムを残したが、Paul MayはA.N.D.名義でもこのあと"Madman's Overture"と"Get Real"の2枚のアルバムをリリースしている。メンバーが変わり、ややハードなアプローチだがこれらの作品もオススメだ。Pete Emmsは今はAl Atkins、Dennis Strattonらと共にTHE DENIALで活動中のようだ。



PANTERA / Projects In The Jungle / 1984

彼らは当時のB!誌に「DEF LEPPARDそっくり」と載せられていたり、当時好きだったPANDEMONIUMと同じページ(だったと記憶)にレビューされていたもんで、なんとなくついでに覚えていたバンドという印象がある。しかし本作を聞いたときには結構熱いものを感じたのだった。アメリカのバンドだというのにスラッシュに見向きもしないかのような真っ正直なパワーメタルだったからだ。バンド名がカタカナ4文字はスラッシュ、という間違った先入観を正してくれたワケだ。ボーカルの声質がたしかにJoe ElliottだしドラムスのパターンがどことなくRick AllenっぽいのでDEF LEPPARDの名を引き合いに出されたのだろう。時にはパワフルに時にはメロディアスに弾いているギターが聞きものだし、キーボードも効果的に入っていて突っ走るだけでない正統派ぶりを聞かせてくれる。"Heavy Metal Rules"が曲もタイトルも熱くなれる。

クサレポイント

このずっと後にスタイルを全く変えてメジャーなアーティストに育っていったワケですが、本作当時とは別のバンドと考えたほうが理解しやすいだろうと思う。バンド名変えてもいいくらいの、ブルータルなメタルへの変身でしたなぁ。



EL DRAGON / Vikingos! / 1994

アルゼンチンの子ども、ではなくアルゼンチン随一のクサレメタルを聞かせるMangialavore兄弟が興したバンドの2ndアルバム。アルゼンチンの公用語はスペイン語なので、スパニッシュメタルに馴染んだ耳には彼らのド根性メタルは心地よい。BARON ROJOを完全なパワーメタルにしたような感じだ。タイトルからお察しのとおりヴァイキングをテーマにした作品のようだが、荒々しさは十分に伝わる。ハモンドなキーボードが出てくるのはビックリだが、これが縦横無尽なソロをガンガン決めてくる快心の出来栄え。90年代の済んだパワーメタルをあざ笑うかのごとく80年代の色しか感じさせない好作だ。こういうメタルはやっぱり保護しなくてはならないだろう。

クサレポイント

母国を歌う"Argentina"はパワーで押す展開が実にカッコ良くて演り手も聞き手も血管吹き飛ぶ寸前(笑)。この1曲のためだけでも買いましょう。いやいや、ほかにも「メタルしかできないけど、これ以上のメタルが他にあるか」といわんばかりのメタルがぎっしり。



FULL MOON / S.T. / 1989

プログレのようでプログレでない、サイケのようでサイケでない、ハードロックのようでハードロックでない、と摩訶不思議なイメージがつきまとうバンド。バッキングはサイケっぽくて曲構成はプログレっぽくてギターはハードロックなワケだ。オープニングの曲が実にダルい曲なので我慢が必要だが、聞きすすめていくと意外に聞けたりする。"Highlander"はけっこうスリリング。とにかく細いながらギターが弾きまくってるのがいい。初回1000プレスに黄色い歌詞カード付き。

クサレポイント

なんといってもノルウェーのマイナーレーベルからのリリースなのにジャケットは豪勢にもRodney Mathewsの手によるイラスト。その点でも是非レコードで楽しみたい作品だ。



FULL MOON / A Live Encounter / 1991

本作は1990年夏のUKツアーのライヴ音源で当時アナログは1,000枚の限定プレスだったようだ。ボーカルとギターとドラムスにメンバーチェンジがあったようだが、ライヴではボーカルが弱いところを露呈しているのが残念だが、それを補わんとばかりにまたもやギターがワウを駆使してとにかく弾きまくっている。70年HRスタイルでリフもメロディもガンガンな、この新しいギタリストはホント熱いねぇ。ベースとキーボードの音色がなんともプログレチックだが演奏そのものはハードロック色が強く、そのへんのアンバランスさが逆に味となっている。後にCD化、こちらは500枚プレスらしいが、何故もっと作らない?(^^ゞ

クサレポイント

キメになると狂ったように手数が増えるドラムスも熱い。"Highlander"がやはりベストチューンだ。