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TRUST / S.T. / 1983

TRUSTは1979年のデビュー作以来、十数枚のアルバムを残したフランスのトップクラスのタテノリハードロック集団だ。本作は彼らの4thアルバムに当たるが、名曲"Antisocial"を収録した2ndアルバムのころよりもソリッドでメロディアスな部分が増えている。それはおそらくこの時代の要請でもあったのだろうが、結果として良い作用だったように感じる。タテノリだけじゃなくてメタリックなリフもあるし泣かせるメロディもある。全曲フランス語で聞きなれない違和感というハンデはともかく、「TRUSTってこんなに聞きやすかったのか」と思える一枚だ。ドラムスはNicko McBrainと入れ替わるようにメンバーとなった英国人、元IRON MAIDENのClive Burrで、ここでの仕事ぶりはなかなかのものだ。

クサレポイント

英語圏への進出という意味で本作は英語でも吹き込まれ"Man's Trap"と改題、日本でもジャケットを差し替えて「罠」という邦題で(センスないねぇ(^^ゞ)リリースされている。しかし英語の発音がイマイチでブレイクには至らなかったのだ。



TRUST / Live ! Paris By Night / 1988

ロゴがテカりはじめた6thアルバムはパリでのライヴを収めた作品。スタジオアルバムではメロディアスなところも聞かせるけどライヴはノリが命ですわい、という感じでとにかく終始タテノリなリズムとハードロックなリフとが交錯しているからタマらない。お客も良く歌っていて、このバンドがどれほどフランスの人たちに愛されているかがよく分かる。

クサレポイント

それにしても「パリ〜!」を連発し、「ボンソワ〜ルッ!」の雄叫びがキマっているBernie Bonvoisinのフランス語のMCが強烈だ。



TRUST / S.T. / 1992

こちらもライヴアルバムだが音源は1980年のものなので上の作品よりも前の時代のものだ。ということで良い意味で荒削りだし、タテノリ全開でやはりライヴバンドの面目躍如といったパフォーマンスを聞かせてくれる。"Live Wire"と"Problem Child"とAC/DCを2曲カバーしているのもハマっていていい選曲だ。それにしても相変わらずBernieのMCはスピーカーからツバが飛んできそうな勢いなのだ。

クサレポイント

彼らのディスコグラフィーはかなりややこしくて、オフィシャルサイトでもそれは怪しい(笑)。実際"Trust"というタイトルは1st、4th、本作と3作もあるので、デビュー作は"Trust"または"L'Elite"、4thは"Ideal"に、本作は"Live"または"Repression Dans L'Hexagone"と呼ばれているようだ。



ROSE TATTOO / Rock'n' Roll Outlaw / 1980

上のTRUSTがフランスのタテノリ王ならオーストラリアのタテノリ王はこのバンドだ。TRUSTほど重いハードロックではないが、AC/DCのプロデュースでお馴染みの元EASYBEATSのHarry VandaとGeorge Youngが本作をプロデュースしていて、やはりAC/DCからの影響が伺える。誰かさんがアルバムでもカバーしていた"Nice Boy"や"T.V."などで堪能できるこのごきげんさんなノリノリハードロックに国境はないと思わせるぐらい実に単純で爽快な曲が詰まったハードロックアルバム。実はそれこそがいつの時代にも必要なロック魂なのではなかろうか。地味ながらかなりリキを入れて弾いているスライドギターの味わいも素晴らしい。本作はリリース前からツアーを重ねていたイギリスで好評を博し、NWOBHMの本場へ進出する足がかりとなった。

クサレポイント

バンドのキャラクター的な存在であるボーカルのAngry Andersonは坊主頭に全身に刺青という恐ろしい出で立ちながら小柄だったので可愛い存在であったのが印象的だった。



ROSE TATTOO / Assault & Battery / 1981

今週はタテノリ大会、ということで、これまたごきげんさんな2ndアルバム。Angry Andersonの声が時折Bon Scottに似ていることもあって音の節々にAC/DCの姿が見える。"Let It Go"などの曲には、ダーティな影を感じられて興味深い。こういう音はイギリス人はイチコロでしょうなぁ。ただ、曲のテンションがアルバム全体にピーンと張り詰めていた前作に比べると少し物足りない。この後レディングにも参加してNWOBHMを楽しんだあと、2枚のアルバムを残してアルバムリリースはストップ。しかし2000年になってアルバムリリース再開、今はどうなっているんだろうと調べたらオヤジなお姿でウェルカム、オフィシャルサイトが見つかりました。
クサレポイント

日本でもリリースされた作品。刺青のイメージによるものだろうけどこの邦題が災いして、当時は聞かず嫌いな人たちを作ってしまったという印象がある。邦題って大事なのよねぇ。