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THUNDER / Headphones For Cows / 1981

泥臭くもメロディアスなハードロックである。こちらのTHUNDERはイギリスのバンドと同名ながらアメリカのバンドだ。メジャーキーの中に憂いを漂わせる作風は来るべき80年代アメリカンハードロックの隆盛を予感するかのような出来栄えだ。チョッパーベースでファンキーなノリも聞かせる曲もある一方で、"Hard Ride To Heaven"あたりが70年代の渋みを残していて実にクールだ。ハード路線とソフト路線の中間を走るボーカルのJohn "Porter" Mcmeansはこの後ソロ名義でアルバムを残している。

クサレポイント

「豚に真珠」、「猫に小判」、「牛にヘッドフォン」・・・。という例えなのかどうか、とにかくインパクトでは満点な邦題。しかし直訳でもあるから工夫がないとも言えるのだ(笑)。



GRAVE DIGGER / Heavy Metal Breakdown / 1984

ドイツのメタルを語るときには無視できないバンドが数あるのだが、Noise Recordsのアーティストということでもこのバンドを抜きには出来ない。彼らは初期HELLOWEEN、RUNNING WILDとともに三枚看板の存在として産声をあげて以来、いまだ真っ赤に燃え続けるジャーマンメタルの炎そのものである。デビュー作でもある本作では、「墓堀人」のイメージもさることながら、とにかくメタルを聞かせることに命をかけたボーカル、リフ、曲パターンのどれをとってもどこを切ってもジャーマンメタル印が丸見え。とくにChrisのボーカルの持つ破壊的な雰囲気は、この時代のジャーマンメタルの中でも群を抜いていた。オープニングでブチかます"Headbanging Man"、それに続くタイトルチューン"Heavy Metal Breakdown"と、この流れは当時も今もメタルの権化であり、聞き手のメタル魂を食ってやろうかという勢いだ。"Legion Of The Lost"で聞かせるサバスな世界もニクい。

クサレポイント

GRAVE DIGGERとして3枚のアルバム、DIGGER名義で1枚のアルバムを残して解散、かと思いきやアイデアはあたため続け、1993年に"The Reaper"アルバムで見事復活。バカバカしいほどに大音量、鳥肌もののChrisの鋼鉄のノドは今でも熱い



SILENT RAGE / Don't Touch Me There / 1989

元はTHE HUNGERの名でデビュー予定だったがそれ以前に名乗っていたSILENT RAGEに差し戻しての2ndアルバム。Gene Simmonsが関わると売れない、と言われた時代に彼に一部プロデュースされて堂々メジャーデビューしそれなりの人気を博したバンドだ。アメリカンハードロック然としたストレートなノリは今聞いてもツボを刺激する。ボーカル兼ギタリストのJesse Damonはハスキーな部分から高音の伸びやかなところまで、「聞かせるボーカリスト」として十分な実力の持ち主だ。ということで本作はなかなかの好作、メロハーな人たちへのオススメ度は高い。

クサレポイント

ELECTRIC LIGHT ORCHESTRAの"Can't Get Her Out Of My Head"をカバー、選曲もさながら自分たちのサウンドにしているのが実にユニークだ。



KILLERS / ...Fils De La Haine / 1985

「キラー」とか「キラーズ」って名前はストレートが身上なんだろう。とにかく猪突猛進を基本にしつつ、実に我の強いメタルである。ドラムスもボーカルも音の悪さも、ひたすら一直線でまさにメタルバカ一代な生々しい音だ。これがサビやキメの後では美しげなメロディをタレ流すから始末が悪い。フランスでは他に例えようのない音で、よく言えばIRON MAIDEN、悪く言えばNWOBHMの名もなきバンドみたい。ボーカルがUdoの孫みたいな声質でなんとも気持ち悪いがなれれば平気(笑)。葬送行進曲をツインリードで奏でる"Killers"や、JUDAS PRIESTそのまんまな"Heavy Metal"がベタでエゲつなくて最高。

クサレポイント

いまだ現役で本作の復刻CDもリリース。こういうサウンドが復刻されるのはある意味奇跡に近いと思う。



KILLERS / Danger De Vie / 1986

ボーカルのUdo度がさらにアップ、メロディアスな部分もちらつかせながら相変わらずのド根性メタル。トップに持ってきた"Heavy Metal Kids"でいきなり全開なところに、このバンドがメタルマニアに愛され続けている理由が伺える。曲と曲をつなげたり、凄いトーンのギターソロを切り込んだりベースソロを持ってきたりするなど、ツボを押さえた大作志向を聞かせながらもツーバス攻撃が続くのが圧巻。とくに"Maitre Du Metal"では、そのパワーとACCEPTばりのコーラスが強烈だ。

クサレポイント

本作後にリーダーのBruno Dolheguy以外のメンバーが全員交代、以降彼らの長い歴史はさらに続くのだ。