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GIPSY / Just For You / 1981

Dierksスタジオで録音された知られざるKraut Rockのアルバム。どの曲もイントロこそアメリカンロックのようで、中にはファンキーなものもあるが、すぐにドイツっぽさが顔を出す。ツインリードのハモリやキーボード、サビの歌メロなどに明るさの中に泣きが入る伝統的ジャーマンロックの旋律を感じずにはおれないのだ。静かなキーボードの調べに絡むツインリードが美しい"Woman"は心に残る。BEATLESの"Get Back"をカバー、少しメロディを変えていてユニークな仕上がりだ。

クサレポイント

ギタリストのJurgen Krebsが全曲を作曲作詞、さらにアレンジしてプロデュースと、このバンドを掌握している。てことはこのジャケは彼なんだろうけど、実際はもう少しオッサンなのだ。



APRIL 16TH / Sleepwalking / 1989

変わった名前のイギリスのバンドがフランスのHigh Dragon Recordsからリリースした唯一の作品。89年のバンドなのに音はNWOBHMそのもので、DIAMOND HEADやGASKINといったバンドに近い雰囲気を持っている。ギターの音がいい感じで古臭く歪み、深いリバーブもかかっているあたりにそういう雰囲気を感じるのだろうか。ソロにしても80年代初期のツボをそのまま保存していたかのような出来栄えだ。意外な掘り出し物の一枚といえるだろう。

クサレポイント

なにかのコンセプトなんだろうけど、内容を推し量るにはふさわしくない、趣味のよろしくないジャケットですなぁ。



TROUBLE / Psalm 9 / 1984

初めて聞いた時にはアメリカのバンドらしからぬ、シアトリカルなバンドだなぁというイメージが強かったが、それは今でも変わらない。彼らは、後からカテゴライズされたストーナーという枠には完全にはまりきらない気がする。もちろん、間違いなくBLACK SABBATH影響下のドゥーミーなノリがメインであり、さらには疾走する部分はかなりカッコよいのだ。この疾走加減がいかにもMetal Blade Recordsのアーティスト、といった感じでツボを刺激する。この疾走感とドゥーミーさのバランスにハマると彼らの世界にずるずるとひきずりこまれること必至。オープニングの"The Tempter"や"Victim Of The Insane"が衝撃的だ。ラストにCREAMのカバーを持ってきたのも意表をつく技だ。

クサレポイント

ジャケットが実に退廃的なのも当時は怖いくらいにカッコ良いと思ったもんだ。隠し絵的なもので、ガイコツが隠されているのだ。



TROUBLE / The Skull / 1985

前作よりもシアトリカル度が進化、おどろおどろしさも少し加味されて、このまんまデンマークにいったらMERCYFUL FATEとしてデビューできそうな感じだ。高音部ではRob Halfordになるボーカルは低音部でもアジがある声だからたまらない。やはりこのバンドはハマると怖い。カルトなニオイをプンプンさせながらパワーメタルな部分もしっかりアピールしているのだ。

クサレポイント

ギターのザクザク感にドラムスのタム回しが絡むところはパワーメタルな印象だが、それが単なるパワーメタルに終わらずに不思議とこのバンド独特の空気に包まれている。そのへんのオリジナリティは同じ時代のバンドと比べても際立っている。



TROUBLE / Run To The Light / 1987

オリジナリティは損なわない程度にストレートな疾走が増えた分、毒は薄くなった気がする3rdアルバム。メンバーチェンジが影響しているとは思うが、なんとなく軽くなった気もする。"Run to the Light"のPVで演奏シーンを見ることが出来るが、意外にまともなパワーメタルのステージだった。ボーカルのRob度は高くなっているが、前2作が強烈なだけに正直印象は薄い作品。

クサレポイント

同じようなコンセプトのジャケットの全3作を残してMetal Blade RecordsからDef Americanへ移籍。音的には大きく変わらないがジャケットのイメージは変えてリリースを続け、いまでも活動中だ。