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SCARLET / S.T. / 1989

ギタリストのTerry Hendersonが主導権を持つバンドのようだ。クサく泣かせつつもストレートで疾走感があるギターを中心にして、玄人のツボをも刺激するメロディが満載。GRAND PRIXをラフにした感じでポップ過ぎずヘヴィ過ぎず英国の湿り気も失わずで、ブリティッシュハードロック愛好家なら買っておいて損はない作品だ。ピアノや多彩なストリングスを取り入れる工夫もお見事。逆に"The Great Deserter"はアコースティック一本のバラードだが、これが古き良きブリティッシュロック〜フォークのDNAをひしひしと感じる佳曲なのだ。

クサレポイント

元WIDOWMAKERのボーカリスト、Steve Ellisはゲスト扱いの参加。ドラムスのAndy BeirneはGRAND PRIXやLIONHEARTでも叩いていた人だ。本作はやはりブリティッシュロックの渋い人たちが作り上げた音という感じがする。



SCARLET / Ship Of Fools / 1992

本作のボーカルはColin Peel、ブルージーでハスキーな声の持ち主だ。Terry Hendersonを中心としてやはり秀逸なブリティッシュハードロックを聞かせてくれていて、ギタープレイにもワウを多用したり、さらにはメロトロンも弾いたりとかなり気合が入っている。ストレートな部分もしっかり聞かせてくれていて、"Under The Gun"ではハモンドオルガンが咆哮するあたりがそのまんまDEEP PURPLEみたいだし、ラストの曲はLED ZEPPELINを意識してるハズ。このへんはまさに英国人のDNAなんだろうなぁと思わずにはおれない。C.C.R.の"Fortunate Son"をカバーするあたりなど、前作にはなかったアイデアも面白く、いろいろな要素がつまった面白いアルバムだ。

クサレポイント

Colin Peelはこの後PRAYING MANTISに加入し、1993年リリースの"A Cry For The New World"アルバムで日本人メタラーのハートをメロメロにしてしまう。このSCARLET時代とは唱法が違うのが興味深いが、すぐに脱退して役者になったのには驚いた。



GLASGOW / Zero Four One (041) / 1986

GLASGOWはGLASGOW出身のバンドなのでGLASGOWというバンド名にしたそうなのだがなんと芸のない名前なんだろう(笑)。NWOBHM後期にシングルを2枚(うち一枚はNeat Records)残したころは田舎のクサレメタルといった感じだったけど、本作ではスケールの大きなメロディックハードに変身している。ヒット曲となった"Secrsts In The Dark"を始めとして、後期LIONHEARTあたりが好きな人にはたまらないメロディラインを持っていて、デビューシングル曲だった"Under The Lifgts"も再録。日本でも翌年リリースされ、それなりに話題になったが本作のみでバンドは消滅したようだ。

クサレポイント

本作でスペシャルゲストはDon Airey。どういうつながりがあったのか分からないが、いい音色のキーボードを聞かせている。



HONEYMOON SUITE / Racing After Midnight / 1988

実に真っ当なメロディックハードを聞かせるカナダのバンド。カナダという土壌から染み出る、アメリカのバンドとは似て非なるメロディをやはり彼らも持っている。このバンドはボーカルのJohnnie Deeの歌いまわしにそれを感じるのだ。声を張り上げることに加えて、エモーショナルでパワフルな部分で憂いを表現したり力強さを表現したり、表情が豊かなのだ。カナディアンロックが持つ泥臭さを知っているノドなのだ。甘ったるいバンド名はともかく、このバンドはJohnnie DeeとギターのDerry Grehanが聞かせるメロディが一番の魅力だ。Ted Templemanのプロデュースもいい仕事が出来ている。

クサレポイント

その二人が中心となって1984年のデビュー以来今も活動中。相変わらず若々しい。



MICHAEL THOMPSON BAND / How Long / 1989

お疲れ気味の体に優しく響くAORっぽいメロディック・ハードロック。たまにはこういうのものんびりと聞かなくては体が持ちません。てことでクサレのクの字もないが、Michael Thompsonの奏でるギターソロは実にツボにくる。Rik EmmetやSteve Jensenといったカナダ人ギタリストが持つメロディを想起させるほど、胸にググッと迫るものがある。メロメロな曲が多いが、そのメロディにしても実に自然と胸に染み入るものだし、Moon Calhounのボーカルも実に心地よい。ゲストにTerry Bozzioが参加している。

クサレポイント

本作でメインドラムを叩くのはJohn Keane。彼は兄のTomと共にKEANEを結成して日本でも成功を収めた人だ。