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MANILLA ROAD / Roadkill / 1988

Page23でも紹介したバンド、1987年のアメリカ国内でのライヴ音源が本作だ。カルトなニオイをプンプンさせた人たちのライヴはいうまでもなくクサく、そして熱い。このMOTORHEADみたいなルックスのオッサンたちはとっくに自分たちの世界を確立していて、それをもうずっと守り続けている。ここには荒々しいリフと切れ目なく続くめまぐるしく劇的な曲展開とが同居する、他にはお耳にかかれないサウンドが詰まっているのだ。初期の名曲"Far Side Of The Sun"で聞かせるような、強引過ぎるギターソロやモタリ寸止めの手数爆発なドラムスが実に強烈。ライヴ音源で得られる臨場感と相まって、クサく熱すぎて涙すら出てくる。CDはLPよりも7曲(!)多いのでそちらを探そう。

クサレポイント

彼らの作品を全作聞けていないのが悔しい、というよりはもう何枚アルバムがリリースされているのかも分からないくらいなのだ。いまだ健在、今後もまだ増えますか(笑)。



CANDLEMASS / Ancient Dreams / 1988

今でも北欧には確かにBLACK SABBATHに傾倒した、重いメロディを聞かせるバンドがかなりある。このバンドもまた北欧メタルの歴史において早い時期からBLACK SABBATHに影響を受けた音で知られたバンドであり、それを自分たちの中にうまく消化して後の北欧のメタルシーンに大きな影響をもたらした人たちでもあるのだ。巨漢ボーカルのMessiah Marcolinのノドはオジータイプではないけど、闇を呼ぶ力みたいなものを感じさせる。
2ndフルレンスとなる本作はすべてのパートのメロディの「よどみ」にみがきがかかった名作でもある。とくにリズム隊の、タメの効いた演奏が印象に残る。ドヨ〜ンとした世界に肩までどっぷりとつかってみよう。

クサレポイント

ラストに"Black Sabbath Medley"を収録。ギターのアイオミ度が高く聞き応えある仕上がりだ。



SACRILEGE / Turn Back Trilobite / 1989

Page14で紹介した作品に続くラストアルバムだが、ドゥーミーなノリを前面に出した曲が増えている。とはいえずっとテンポダウンしたままではなく、時折スピードアップするメロディにツインリードのハモリをもってくるという、ニクい曲展開にはゾクゾク させられる。これで女性ボーカルだというのも実にユニークだ。欲を言えばもう少し深みのある声質ならよかっただろう。唐突ではなく、自然と聞かせる変拍子をキメる演奏陣のテクニックはかなり高いと見た。

クサレポイント

11分を超える大作となった"Into The Sea Of Tranquility"は泣きのギターをフューチャーしたプログレ志向の曲。英国のバンドがこういう湿り気を見せるとタマらないのだ。



STARGAZER / Back On The Street / 1988

こういうバンド名でスラッシュやブルータルなメタルだったら皆が怒るわけで、しっかりとオルガンが入った虹色なサウンドに納得。ドイツ臭さはさほど感じさせず、どちらかというと英国産のメロディックハードロックのような曲調がメインではあるが、それでも"Stargazer"(カバーではない)で聞かせるクサいメロディはドイツ生まれの証でもある。この1曲のためだけに買っても損はないと思う。他には"Break Out"や"Break The Law"が初期北欧メタルのようなニオいとクサみを感じさせる。
ボーカルも上手い人だが、特筆したいのはPaul Kriegerのギター。ツインリードで聞かせるメロディはやはりヨーロッパ大陸の薫りをふんだんに染み込ませたものであって、このへんの音に敏感に感じる琴線はいつまでも持っていたいと思わせるメロディである。

クサレポイント

写真のジャケットは1994年にLong Island Recordsからリマスターされて復刻リリースされたもの。オリジナルはいまだお目にかかったことはないのだ。



STARGAZER / Dinomania / 1994

前作リリース後にレーベルとのトラブルでドイツを離れアメリカに拠点をおいて活動を続け、再びドイツに戻り1991年に"Commercial Gods"をリリース。さらに1994年に3rdアルバムとしてリリースしたのが本作だ。デビュー作に比べて明らかな変化は、ヨーロッパのバンドが持つメロディが薄れてしまっている
ということだ。メロディは悪くないが、これならどんなバンドにも出せるだろうと感じる。何よりもボーカルの唱法が力のない、ルーズなものへと変化してしまったのがとても残念。

クサレポイント

しみじみしたバラード"Friends"が唯一の救いかと思いつつ、 結局一番インパクトがあるのはこのジャケット、ということになるのだ。