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BELLA BESTIA / S.T. / 1984

クサレな雰囲気をほどよくまぶしたストレートでノリのよいハードロック。スペイン語の巻き舌ぶりはさほど濃密ではないが、素っ頓狂に王手のかかったボーカルが印象的だ。演奏そのものはNWOBHMからの影響を思わせる荒削りでロウなサウンドながら、とにかくギターがタレ流すメロディはクサくて素晴らしい。初期スパニッシュメタルのカタログからははずせない一枚としてマニアは必聴。

クサレポイント

ボーカルは後にルックスもまぶしいメインストリームなバンド、NIAGARAへ。ギターのManolo AriasもNIAGARAを経てMUROにも参加、スペインのロック界では名うてのギタリストとして知られる存在となった。



COUNT RAVEN / Destruction Of The Void / 1992

退廃的なジャケットアートやアルバムタイトルで予測可能、思い切りサバスをイメージしたドゥーミーなバンドの2ndアルバム。ドラムスのダイナミックな演奏が、どよ〜ん、とよどんだノリに不思議に似合っている。走らないからこそのこのダイナミズム。ボーカルは見事にオジーそのまんまな声で終始しているし、演奏陣もサバスの全期に渡っての音を再現するかのようにザクザクとしている。ドゥーミーなバンドにそれほど詳しいわけではないけど、このバンドはフォロワーとしてトップクラスに挙げられても不思議ではないだろう。音の広がりも素晴らしい。

クサレポイント

スウェーデンのバンドというのも驚きだけど、変に白塗りで北欧カラーを出すのではなく、ブリティッシュハードロックのトーンをしっかりと見につけているのがまた驚き。



ZERO NINE / Headline / 1984

フィンランドのDEEP PURPLEの異名をとったバンドの3rdアルバム。もともとフィンランド随一のハードロック魂を持っていたバンドであり、Page113でも紹介した、イアン・ギランがプロデュースした2ndアルバムの大成功のお陰ですでにこの作品のころにはそれなりのステイタスを築いていた。"Seven DAys Of Love"や"Walk Away"で直感するのだが、本作ではさらにメロディラインが野太くなった感じがする。それは彼ら独特の泣きの旋律を盛り上げるには必要な進化だったのだろう。よりブリティッシュな味わいが楽しめる一枚である。

クサレポイント

もちろんハモンドオルガンもでしゃばり過ぎない程度にバックで鳴り続けている。自分たちに求められている音が分かってるバンドって、聞いていて疲れないから良いですなぁ。



SATROX / Energy / 1992

Page8でジャケットともども絶賛したバンドの2ndアルバム。とにかくオープニングの"The Prophecy"は、これぞ欧州型メタルの醍醐味といわんばかりのギターリフに悶絶ものである。この疾走感をさらに煽るのが、ハイトーンを力強くふりしぼるWerner Schweizerのノド。母国の大先輩KROKUSからの影響が伺えるギターリフを中心にしたパワーメタルの要素と、キーボードがメロディを織り成す一連の北欧メタルにも通ずる美的旋律とが、彼の声を接着剤にして見事にひっついた、といった感じ。バラードの"Tomorrow"はもっと語られるべき、知られるべき名曲だ。

クサレポイント

リリース当時にかなり話題になった作品だったけど、バンドは本作で活動を停止。Werner Schweizerはその後加入したLOVECHILDで活動中だ。