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SILVER MOUNTAIN / Shakin' Brains / 1984

日本のメタラーに「北欧メタルは様式美」との意識を植え付けた一番の功労者は、このSILVER MOUNTAINである。「北欧メタルを一枚」となると迷わずこのアルバムなのだ。フランス革命をテーマにし、フランス国歌をギターソロに取り入れたオープニングの"1789"でクサく美しく、しかもパワフルなメロディに当時かなりのショックを受けた人も多かっただろう。歌のヒドさはともかく(笑)、クラシカルなメロディを一音一音ていねいに弾きまくるギターのJonas Hansson、クラッシックを音楽的背景に持つキーボードのJens Johanssonという天才がバンドを引っ張り、中世的クラシカルフレイバーを目一杯つめこんだメロディが満載。キーボードとギターソロが天から降ってくるサウンドはこの作品でないと味わえないのだ。その二人の壮絶な掛け合いは"Vikings"をはじめ、あちこちで堪能できる。

クサレポイント

アマチュア時代から苦労を重ねてやっとのデビュー作、垢抜けないのは仕方ないけど、なんというジャケットなんだろう。この絵からこの音は結びつかない。



SILVER MOUNTAIN / Universe / 1985

本作レコーディング直前になんとあのYngwieさんにAndersとJensのJohansson兄弟を引き抜かれてしまったが、残った二人がなんとかメンバーを補充し、レコーディングを完了させた2ndアルバム。なんといっても前作で、私はバンザイものだったけれど聞く人によってはまったく受け入れられなかったJonasのボーカルを補うべく、元MENTZERのChrister Mentzerを新ボーカリストとして迎えた。ヒゲジジイな人で、良くも悪くもクセのない声質だ。前作のアルバムタイトルを曲名にした"Shakin' Brains"や、ライヴで盛り上がった"Universe"が印象的だが、Jonasは全編にわたって相変わらず弾きまくっている。

クサレポイント

前作で見せた驚きのクラシカルフレイバーはやや後退した感があるが、それはJensの音がここにはないからなんだろう。



SILVER MOUNTAIN / Hibiya - Live In Japan '85 / 1986

SILVER MOUNTAINが日本にやって来た。「第5回 Japan Heavy Metal Festival」のゲストとしてステージに彼らが立ったわけだが、2ndアルバムのメンバーでのライヴがそれまで全くなかったこともあり、このライヴはあまり芳しくないデキだったようだ。たしかに音を聞く限りでもかなりバタバタしている感じだしバランスも良くない。時間とともに疲れを見せるボーカルも痛々しい。それでも次々と繰り出されるSILVER MOUNTAIN節は、これが聞けるだけでも幸せ、と思わせる何かを持っている。「スウェーデン演歌」と命名したくなる、クサく熱い"Always"は、よせばいいのにJonas Hanssonがリードボーカル、見たかったなぁ(笑)。ヘルプでキーボードを弾いているのはMats Olausson。

クサレポイント

Page103でも紹介した本作だが、こちらは(といってもジャケは同じ)CD盤で、リミックスされたLP盤とは異なり、オーバーダブなしの生々しい音源になっている。臨場感で聞くならこちらのテイクが良いだろう



SILVER MOUNTAIN / Rose And Champagne / 1989

3年のブランクを経てリリースされた4thアルバム。メンバーはオリジナルのJonasとPerのほか、2ndでヘルプ扱いだったキーボードのErik Bjorn Nielsenが正式メンバーにエントリー、ボーカルのJohan DahlstromとドラムスのKjell Gustavssonが新加入となった。トップの"Romeo & Juliet"でぶちかまされる歌謡曲なノリに目まいを覚えるが、その後はこれまでの路線とハードポップ路線が一進一退の攻防を広げるかの如き展開だ。Jonasのギター自体はクサさを忘れてはいないが、曲そのものはポップなものが多く、ムリに売れ線を狙ったかのような感じだ。作られた当時はファストナンバーだったデビュー前の作品"Light The Light"や、またまたJonasが歌ってしまったクッサクサのバラード"Where Are You"と"Not You Baby、微妙に歌謡曲な"Paradise Smile"あたりに、SILVER MOUNTAINの本当の姿を見ることが出来る。

クサレポイント

てことで中途半端なノリでバンドが続くことはなく、Jonasが離れてバンドは解散となった。その後、それぞれのメンバーがそれぞれに活動を続け、2001年にはオリジナルメンバーで一瞬の復活、"Breakin' Chains"という、なんともデビューアルバムにひっかけたようなニヤリものなタイトルのアルバムを残している。