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PLASMATICS / Coup D' Eat / 1982

モヒカンでダミ声の女性ボーカル、Wendy Orlean Williamsのスタイルと個性があまりにも強烈で、彼女の毒をそのまんま蔓延させたようなバンドだった。ダイナマイトを使い車を爆破させたりギターをチェーンソーで切り刻んだりと、凄まじいライヴは折に触れあちこちから「出入り禁止」の勲章を得た。
パンクスを意識しながらハードロックのアプローチを持つスタイルは良く評価すれば「個性的」だったと言えるだろう。実際、Wendyは実にアグレッシヴだったし、スタイルこそキワモノだが、音を聞かせるスタンスにおいてはオフザケは微塵もない、ストレートな「ロッカー」であった。かつては日本人も在籍していたことがあるPLASMATICS、3作目となる本作がヒットしたことでその名がワールドワイドになるわけだが、WendyがMOTORHEADのレミーといい仲になったこと、それが遠因となってエディ"ファスト"クラークがMOTORHEADから脱退してしまったことも話題となった。Michael Wagnerがエンジニアを担当し、Dieter Dierksがプロデュースするという贅沢な布陣で完成したこの作品はスキのないハードロックアルバムに仕上がっている。
クサレポイント

MOTORHEADのカバー"No Class"は彼女のダミ声が実にハマってる、よい仕上がりなので一度は聞いておきたい。こんな声質の女性ボーカルは二度と現れないだろう。1998年に彼女は帰らぬ人となってしまった。R.I.P.



ATHEIST / Piece Of Time / 1989

テクニカルなスラッシュメタルを聞かせるバンド。ボーカルスタイルが「デスメタル高音の部」だからだろうか、後々の評価では「デスメタルの原点的作品」となっているらしいが、私が自分なりに印象づける、俗に言う「デスメタル」とは演奏、楽曲ともに明らかにレベルが格段に違うし、これが原点ならデスメタルはどんどん尻すぼみになっていった、ということになる。本作は各パートともにアイデアが喧嘩せずにぶつかりあう世界が展開されていて、むしろテクニカルスラッシュ〜アメリカンパワーメタルとして聞きたい作品だ。デス声が極端に嫌いな私でも本作の持つパワーはイヤというほど感じる。

クサレポイント

翌年のツアーでバンドは事故に遭い、不幸にもベーシストを失ってしまう。バンドのイニシアティヴをとっていた人に捧げた2ndアルバムもまた名作として誉れ高いのであった。



BAD SISTER / Out Of The Business / 1992

ドイツのメロディックハードロックバンドの2ndアルバム。リードボーカルのPetra嬢はややパワー不足ながら、そのハスキーな声質はこのテのメインストリームなメロディに乗せるとカッコよい。アメリカンハードロックへの憧れさえちらつかせる、キーボード入りのメロディはメロハー派に強くアピールするものだろう。VICTORYやBONFIREといったバンドと同じニオイがするバンドだ。

クサレポイント

本作後に解散してしまったが最近また再結成、いまも活躍中だ。



FROZEN GHOST / Shake Your Spirit / 1991

オトナのロック、というかテクニックを持ったミュージシャンが余裕で聞きやすいハードロックを聞かせている、という感じの作品。AOR型のハードロックだが、少しヒネリを入れたメロディがユニークだ。Arnold LanniとWolf Hasselはバンド解散後に全米ナンバーワンを生み出してしまった、Page151て紹介したSHERIFFのメンバーだった人。FROZEN GHOSTでも相変わらず良質なカナディアンハードロックを聞かせてくれている。

クサレポイント

ギターはPhil X、後にPage179で紹介したRandy Covenのバンドで活動し、その時のプレイが認められてRik Emmett脱退後のTRIUMPHに加入したギタリストなのだ。