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APRIL WINE / Animal Grace / 1982

トリプルギターもウリだったベテランなバンド。本作は彼らの数多い作品の中でも後期のものになるが、リリース当時はNWOBHMやLAメタルの勢いに負けない、余裕のカナディアンハードロックを聞かせてくれた。「野獣の叫び」というありがたくない邦題はともかく、聞きやすくてエモーショナルで、少しだけモダンなAPRIL WINEが楽しめる作品だ。当時はよくラジオから流れていたオープニングの"This Could Be The Right One"がお気に入りだったけど、今聞き返すと"Sons Of The Pioneers"のダイナミックなドラミングにも驚く。

クサレポイント

1984年のツアーでバンドは活動に終止符を打つのだが、90年代になってオリジナルメンバーのMyles Goodwynを中心に復活、いい感じのオヤジとなっていまも活動中のようだ。



RACER X / Second Heat / 1987

RACER XはPaul Gilbertが一番の看板だったような印象があるが、ボーカルのJeff MartinにしてもScott Travisにしても実力の持ち主だったところにガッチリとした曲がハマって、バンドとしてもこのころのメタルの中では飛びぬけた存在、これだけの早弾きはセンセーショナルだったし、アメリカのバンドにしては玄人好みのバンドだったように思う。2ndアルバムとなる本作ではと堂々と渡り合う早弾きギタリスト、Bruce Bouilletが加入、これでツインリードもベースもドラムスもとにかく早弾き、早叩き(笑)という凄まじい形態が完成した。「早い」ということが押し付けがましくなく、すんなりと耳に届くあたりに、曲構成の良さがあるように思う。

クサレポイント

Eric Martinと実の兄弟でもあるJeff Martinはこの後BADLANDSになんとドラマーとして参加。とにかく背が高いScott TravisはJeffとRob Halfordが友人だった縁もあって、後にJUDAS PRIESTに加入している。



STINGRAY / Better The Devil You Know / 1979

日本のバンドではなくて、南アフリカのハードロック。メロディラインがアーシーで、カナディアンハードロックのような雰囲気だ。ダブルキーボードだけど、アルバムがキーボードで埋め尽くされていることはない。リフにしてもソロにしてもギターがなんとも渋いメロディを聞かせることと、アメリカンプログレを想起させるブ厚いコーラスが魅力のアルバム。STYX、BOSTONあたりを好む人にはオススメ。

クサレポイント

タイトルチューンはドイツでマイナーヒット。アメリカなりに進出していれば、もっと話題になったかも知れないバンドだ。



STINGRAY / Operation Stingray / 1981

キーボードが一人抜けて5人組となった2ndアルバム。ハモンドオルガンを鳴らすようになってメロディアス度がアップ、枯れた味わいのギターは健在、リズムはヘヴィになって、前作に増して渋くカッコ良いアルバム。STYXは実はイギリス出身でした、という感じの音で、70年代ブリティッシュハードロックやプログレのエッセンスを充満させているあたりがこのテの音には諸手を挙げて服従する私にはタマらない。ある意味不器用な音だが、こういう音がなければハードロックシーンは実に味気ないものになってしまうだろう。

クサレポイント

後にドラムスがサメに襲われる事故に遭い足を失ったようだ。メンバーチェンジも行われたが残念ながらバンドは活動停止となってしまった。オリジナルメンバーのベーシスト、Eddie Boyleはミュージシャンとして活動を続けていたが、2001年6月、ライヴ演奏中に亡くなっている。R.I.P.