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THOR / Unchained / 1983

6曲入りのミニアルバム。いやでも目に飛び込んでくる、メタルには取り立てて必要はないこの筋肉質、しかしそれを彼らの音の象徴として、こうやってドーンとジャケットにしてしまうことのその精神の何と尊いことか。いやホント単純なことだけど、当時はこれだけでこのバンドはきっと凄いバンドなんだと信じて疑わなかったのだ。
・・・と書けば、「実がこれがとんだくわせもので・・・」と続くところが、本作は実に熱いハードロック魂がこもった作品なのだ。単純なリフ、オンチなコーラス、悪い音質。だからどうした、それよりも重厚で聞き手のメタル魂を揺さぶるメロディがここには詰まっているのだ。

クサレポイント

本作後に脱退してしまうギターは若き日のKarl Cochran、今はJoe Lynn Turnerバンドのギタリストとしてもおなじみの人だ。THORは今でも活動中、筋肉はそのまんまだけどすっかりオッサンになってしまったなぁ。



CIRITH UNGOL / King Of The Dead / 1984

アメリカのカルトメタルの話になったら真っ先に思い浮かぶバンド。Page70で紹介したデビュー作から3年後にリリースされた2ndアルバムながら、1stアルバム同様に、なんともヘンテコリンな感じの彼らの世界が展開されている。全然進化がないわけじゃなくて、これしか出来ない、という感じで、70年代ハードロックの混沌とした部分がドゥーミーなノリに乗せて、うねる様に寄せては返す不思議な波のようだ。爬虫類系のボーカルも一度聞くと忘れられない。これらを音と聞くか世界と判断するかで、極端に好き嫌いが分かれる作品でもある。

クサレポイント

一度聞けば「ああこれか」のクラッシック曲"Toccata In Dm"のカバーも本作には不思議と溶け込んでいる。サバシーなバンドチューン"Cirith Ungol"がラストにガツンとハマっている。



CIRITH UNGOL / One Foot In Hell / 1986

ハマればクセになる彼らの世界はそのままながら、カッコよくフックの効いたメロディはそれまでの作品に比べてやや聞き易くなった感のある3rdアルバム。Tim Bakerの声質はまさにアメリカのカルトメタルの声そのものである。それにしても、当時のコマーシャルな時代にこんなにも我が道を行く音を出していたのは聞く側もこっ恥ずかしさすら覚えてしまう。聞きやすくなったとはいえ、素人を寄せ付けない毒蛾の粉をブンブンと振りまいているような作品。
ちなみに彼らのアルバムカバーは全作Michael Whelanの手による美しいアートだ。
クサレポイント

ヘッヴィ〜、メッタァ〜ルッ!と小気味良く歌われてしまう"100 Mph"はファストなナンバーでちょっとオドロキだ。



CIRITH UNGOL / Paradise Lost / 1991

CIRITH節はもちろん変わらないが、ギタリストが交代し骨太なギターを聞かせるようになった。メロディも、カルトっぽさ+泣きのメロディがバランスよくまぶされており、これまたCIRITH UNGOLの世界を期待通り聞かせてくれている。"Heaven Help Usのような、普通のメタルも入っているのもたぶん計算ずくのことではないだろうか。普通であってもどこかヒネリがあってカッコ良いのだ。ダイナミックな音質でもあり、CD世代には抵抗なく聞けるのではないだろうか。Timの爬虫類度がややダミ声と化しているのはいたしかたないだろう。Arthur Brownの"Fire"のカバーもエゲつなくてよろしい。

クサレポイント

良くも悪くもカルトの王様、派手に売れることはなく翌年には解散してしまった。けれど最近トリビュートアルバムがリリースされるなど、人気はいまだに根強いのだ。