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CHINA / S.T. / 1988

スイスのバンドには共通してタテノリ好きという印象があるが、このCHINAも節々にそれを取り込みながら、メロディアスな雰囲気をうまく醸し出している。Dirk Steffensのプロデュースにイマイチもの足りなさを感じるが、アメリカナイズされたバカ明るさよりも、メインストリームな音の中に大陸的で伸びやかなパワーと泣きのメロディを感じるバンドだ。時代が時代だけに「スイスのボン・ジョヴィ」などと書かれていたが、意味のないことだと思う。元BLOODY SIXのギターClaudio Matteo、元STORMBRINGERのベーシストMarc Lynnといった人たちが結成したバンドというだけでマイナー好きは嬉しくなるのだ。"Back To You"はWHITESNAKEの"Slide It In"のようなギターソロが出てきてご愛嬌。当時は"Wild Jelousy"がMTVでガンガンかかっていましたなぁ。"Rock City"や"I Need Your Love"のようなハードロックの王道ソングは理屈ぬきに素晴らしいく、なかなかのメロハーマスターピースである。邦題を"One Shot To The Heart"にして日本でもリリースされた。

クサレポイント

その"Back To You"はFernando Von Arbから曲をプレゼントされた曲。他にもMarc Storaceがバックコーラスを務めたりとKROKUSからのサポートもしっかり受けている。



CHINA / Sign In The Sky / 1989

スイスを飛び出してアメリカでレコーディングされた2ndアルバム。デビュー作で日本でのバンド名表記は「チャイナ!」と何故かビックリマークがついていたが本作から普通に「チャイナ」と表記。しかしジャケットに意味不明な「君炎」の文字が飾られるようになった。本作ではボーカルが元KROKUSのギタリスト(!)Patrick Masonに、ベーシストが元KILLERのBrian Kofmehlにチェンジ。ちなみに脱退したMarc LynnはGOTTHARDに参加。スイスのロックシーンの人脈がかなり狭いことが良く分かる。前任の、鼻にかかったハイトーンもそれはそれで好きだったのだけど、オーソドックスに悠々と歌う新しいボーカリストは、このバンド持ち前のメロディに磨きをかけて洗練されたメジャー級のハードロックへと昇華させている。ゲストとしてSteve Grimmettがバックコーラスで参加、いろんな知り合いがいるんだねぇ〜。

クサレポイント

"In The Middle Of The Night"や"Sign In The Sky"など、WHITESNAKEのバラードを想起させる泣きのメロディはこのテのAORハードロックを聞かせるバンドとしてすでに貫禄さえ漂わせているのだ。



CHINA / Live / 1991

またまたボーカルが変わって今度はライヴ音源の6曲入りミニアルバム。オーバーダブ一切なしの生音からも、彼らの演奏能力の高さが伺える。加えて、曲がいいバンドは聞いていてもストレスを感じないということの良いサンプル的なライヴアルバムで、これならもう少し多く聞いてみたいと思わせる。その曲数の中途半端さだけが少し残念だ。
ラストでCCRの"Proud Mary"をカバー、ノリノリなライヴ感が良く出ている。
クサレポイント

コーラスがブ厚くてメロディがしっとりと揺れているあたりがこのバンドの強み。"Sign In The Sky"の後半、スローから一転して疾走し、ツインリードで幕を閉じる展開がタマらないのだ。




CHINA / Go All The Way / 1991

アメリカで成功する、ということはこの時代のどんなバンドでも考えたことだろうし、彼らも活動の拠点をアメリカに移したんだからアメリカでのアルバムリリースは果たさなければならなかっただろう。けれど、明るいなかにもブ厚くて湿った彼ら独特のメロディはかなり後退し、聞きやすさに重点を置いたアメリカンハードロック調の売れ線メロディは正直言ってイメージが中途半端で捉えどころがない。「君炎」の文字を見なければCHINAのアルバムとは思えないだろう。余裕のハードロック、しかしCHINAらしさは薄まっている。本作以降もメンバーチェンジしながらアルバムをリリース(Marc Storaceと連名でのアルバムも後にリリース)し、活動は続けていった。

クサレポイント

現在はリーダー格のClaudio Matteo、ボーカルのEric ST. Michaelsはソロ活動中。Freddy Laurenceは名ギタリストMandy Meyerの後任としてGOTTHARDに加入している。