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CROWS / The Dying Race / 1990

1981年に結成された老舗バンドだが活動が停滞し、ベーシストのFrank Bankowski がFrank Banxの名でANGEL DUSTに参加した後にCROWSに戻り、メンバー立て直して念願のデビュー作である本作をリリース。4オクターブ出るというボーカルは、そのわりには一本調子で抑揚が足りないような気がする。このバンドはむしろそれよりも二人のギタリストがツインで聞かせるメロディが流麗なことの方が優れている点だといえる。ジャーマンメタル独特のクサいメロディではなく、オーソドックスで普遍的なヨーロッパ大陸型の正統派パワーメタルが少しだけ凝ったメタルに挑んだ、という感じの音だ。この、「ウソツカナ〜イ!」のジャケットのとおり、実に真っ正直なメタルを聞かせてくれる。

クサレポイント

結局この作品を残すだけとなりバンドは解散。メンバーはANGEL DUST、SODOMといったバンドで活動を続けている。このCROWSはそれらのバンドほどスラッシーではないのだ。



RESCUE / S.T. / 1990

聞いていて、こっ恥ずかしくなるような純粋無垢なハードロック。コーラスやメロディなど、どこをどう切ってもラジオのエアプレイを期待できそうなメロディがギュウギュウに詰め込まれた感じ。しか〜し、同じことをアメリカのバンドがやるのとヨーロッパのバンドがやるのとでは聞き終わった後に残るものが違う、という見本のようなメロディックハードだ。こういう湿り気というか、明るいコード進行のなかに憂いを忍ばせているから油断ならない。コードとコードの間のフックに、泣きの要素が見事に隠れている。ゲストにZOTLのメンバーが参加、これまた渋いゲストだ。

クサレポイント

ほとんど素性も知られていないバンドだし、こういう人たちが残す優れた作品を隠れた名作というんだろう。派手ではないけど、ロック魂を十分に感じるメロハーな作品だ。



PAUL DEAN / Hard Core / 1989

元LOVERBOYのギタリストで、ビッグネームではあるがこのアルバムタイトルと、こちらも汗ばんできそうなジャケットは作品の内容を推し測れないものにしてしまった。元〜はおいといて、カナディアンハードロックに位置づけても何の遜色もない、ストレートなギターガッツなアルバムなのだ。本作の"Draw The Line"はもともとBryan Adamsの曲だけど、Paul Deanが演ってもかなりカッコよい曲なのである。LOVERBOYとはまた違った、ハードロックギタリストの感覚がギター以外のパートにも行き届いた好作だ。

クサレポイント

その後復活LOVERBOY(ベーシストは亡くなったみたいですねぇ)のギタリストとしてライヴ活動を続けているが、彼のみならず、トシとりましたなぁ。




SHOK PARIS / Concrete Killers /

Page115で紹介したメロディアスなパワーメタルだった彼らの3rdアルバムにしてラスト作。本作は日本でも発売されたが、前作が素晴らしい作品だっただけに見劣りは否めない。しかし、メロディアスな部分が希薄になったものの、ツインリードやリフ、軽いスネアの音はNWOBHMの時代のメタルを感じさせるし、"The Heat And The Fire"のような、コーラスとリードボーカルが追いかけあいながらメロディを辿り、そこにツインリードが絡むという展開はこのバンドならではのカッコ良さを感じるのだ。熱い唱法もメタルに慣れた耳には心地よいはず。しかし、ジャケットのイラストは何とかならなかったのだろうか。

クサレポイント

最近になって再結成されたが、何人かはAFTERSHOKで活動中。こういうネーミングはシャレてます。