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HIGH VOLTAGE / Written In Stone / 1992

全くの無名バンドながら。まずはこういうバンド名にしたことを羨ましく思う。しかしタテノリではなくて、オーソドックスでメロディアスなハードロックを聞かせるバンドだ。タイトルトラックのように、後半部分で盛り上げてくる展開がニクい。劇的な曲構成のスパイスとしてキーボードを上手く使っているあたりも印象的。

クサレポイント

ギターのNick Cataneseは現在はZakk Wylde率いるBLACK LABEL SOCIETYで活躍中。う〜む、大出世だ



TYRAN' PACE / Watching You / 1986

Page67で紹介したとおり、この時代の他の剛速球系のジャーマンメタルと同じく、とにかく理屈ぬきのパワー一辺倒なリズムと天から降ってくるようなRalf Scheepersのカミナリボーカルがこのバンドの最大の魅力であった。3rdアルバムとなる本作でその傾向はますます昇華され、高評価を受けたのだった。・・・が、個人的にはこのパワーダウンはどうしたもんだろう、と当時はかなりショックだったのもまた事実。ドイツくさいメロディを背負いながらハチャメチャに突っ張るあのスピード感が本作にはなく、ギターが全然リフを刻まないことにかなりフラストレーションを感じる。それは疾走感を奪い去っていることでもあるのだ。そんなわけで、いまだに2ndアルバム以上の評価は与えられない作品なのである。

クサレポイント

一度聞いただけで彼の声と分かるRalf Scheepersのノドはこのころから光っていた。このあとGAMMA RAYに参加し、世界的な成功を収める道を辿っていくのだ。



LAWDY / Outlaw Invasion / 1990

アメリカンハードロック風なロックンロールが基調なので聞かず嫌いなリスナーをたくさん作ったバンドながら、なんといってもお国がドイツなだけに、例えばギターソロの節々にはクサいメロディが顔を出し、バッキングはかなりパワフルという、ラフになりきれないウェット感がヨーロッパのバンドびいきには安心感をもたらすバンドであった。"High On Love"は疾走感が素晴らしく、どこか東欧チックなクラシカルなメロディを聞かせるし、"Never Surrender"は伝統的ジャーマンメタルのスタイルだ。No Remorse Recordsからのリリースにも納得の内容。Sven Freytagの甲高いボーカルは好き嫌いのあるところだろうけれど、個性的で印象に残る声だ。

クサレポイント

バンドはボーカリストを変えて2ndアルバムをリリースし解散。ベーシストのCarsten Rebentisch はその後SARGANT FURYに加入している。



SANCTUARY / Refuge Denied / 1988

MEGADETHのDave Mustaineがプロデュースと聞いて、若さにまかせたスラッシュだったらイヤだなぁと思っていた耳をブチ破るだけのパワーが本作には充満している。とにかくシアトリカルで豊かな表情を見せる楽曲の出来が素晴らしい。Warrel Daneのボーカルが発揮する説得力は、JUDAS PRIESTのロブをいやでも想起させる。それらが相まってSANCTUARYの音楽が広がりを見せるのだ。これほどの名作、日本盤でも「新たなる聖地へ」の邦題のもとリリースされたのにプロデューサーの名前ばかり話題になって、肝心の内容は過小評価のまんまだ。彼らの聞かせる世界が十年ほど早く世に出てしまったとしか言いようがない。

クサレポイント

JEFFERSON AIRPLANEの"White Rabbit"のカバーがこれまた意表をつく傑作だ。このあと2ndアルバムを残してバンドは解散、ボーカルとベースはNEVERMOREで活動を続けた。