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LEVITICUS / I Shall Conquer / 1984

スウェーデンから輩出された3人組、ペースペダルやムーグのシンセなども巧みに操るところなどはNWOBHMのLIMELIGHTを想起させる。Page108で紹介したアルバムの一つ前の作品が本作となるが、もともとは全てスウェーデン語でレコーディングされリリースされたデビューフルレンスアルバムの"Jag skall segra!"を英語に変えて再びレコーディングした作品であり、本作がきっかけとなってバンドは英語圏のメタルシーンで話題になり、ワールドワイドな成功につながっていくことになる。ボーカルのオッサンくさい声質が、最後には不思議とこの声でないとこの劇的なメロディには合わない、と思わせられるのだ。

クサレポイント

こんな嬉しいくらいにクサレなジャケットだけど、中身は実に玄人ウケするような、疾走感がありながらもしっとりとしたメロディもあり、さらにはキーボードを中心に深いサスティンを聞かせた独特の世界がこのバンドの魅力なのだ。



MOTHERLODE / The Sanctuary / 1986

これまたスウェーデンのバンドで、こちらもまた素晴らしいメロディックハードロックを聞かせてくれる。やや一本調子な、ハイトーン系のボーカルが耳に慣れれば何の問題もなく北欧メタルの名盤として推すことが出来るだろう。ハモンドオルガンがバックに流れているものは無条件降伏(笑)。DEEP PURPLEとNWOBHMとアメリカン産業ロックといった、混ざりそうもない要素をうまく交通整理して曲に仕上げられたセンスも素晴らしい。

クサレポイント

本作リリース後の翌年に2ndアルバムをレコーディングしてボーカルのSonny Larssonが脱退、BLACKSMITHのPer Englundが加入して活動を続けた。Sonnyは上述のLEVITICUSのギタリストBjorn StigssonとともにXTを結成している。




BLIND ILLUSION / The Sane Asylum / 1988

サンフランシスコのスラッシュメタル誕生直前の3大バンドといえば、TRAUMA、ANVIL CHORUSとこのBLIND ILLUSIONだった。TRAUMAはクリフ・バートンという稀有のベーシストを産み落とし、ANVIL CHORUSはその後HEATHENとして発展した。BLIND ILLUSIONがすんなりとスラッシュの中心に落ち着かなかったのは単なるスラッシュとは言い難い、なんだかヘンテコリンな音楽性が際立っていたからだろう。テクニカルなフュージョンの手法を感じさせるギター、ジャズの才能を感じさせる、音数が多いベース、基本はツーバスなのに突っ走るだけでは終わらずに変拍子を多用してアドリブをきかせたような曲の構成など、一般的なスラッシュとは完全に異質な世界がこのアルバムに感じることができる。それはリーダーであり、少し物足りないボーカルを聞かせるMarc Biedermannの世界とも言えるのだろう。カミカゼをテーマにした"Kamakazi"にそれが凝縮されている。しかし、「カマカジ」ってのはヒドい(笑)。

クサレポイント

ギターとベースはこの後バンドを飛び出して、これまたハードロックでもプログレでもない、あてはまるジャンルがないヘンテコなバンド、PRIMASを結成した。



NO SWEAT / S.T. / 1990

アイルランド生まれのメンバーがロンドンで活動しているときにDEF LEPPARDのJoe Elliottに気に入られてシングル盤をリリースしてもらい・・・となるとそりゃもう英国産の憂いと湿り気をたっぷりと含んだ音になっているはずで、売れ線狙いのメジャーコードな曲であってもそれは感じられる。ただし、極端にアイリッシュなメロディをクサクサに聞かせることはないし、彼ら自身がCCRやFREEといった、70年代のアメリカとイギリスの両方のロックに影響を受けていることからも、万人に聞きやすいメロディックハードロックに仕上がっている。とくに後半部がなんとなくFREEっぽいのがその表れだろう。まだ若いながらも男臭さをしぼり出そうと一生懸命なボーカルスタイルが、なおさらそう感じさせるのだ。ちなみに彼の名はPaul Quinnだが、SAXONとは何の関係もない(笑)。

クサレポイント

プロデュースはKeith Olsen、いい仕事してて、こういう音は得意な分野なんだろうなぁ。