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SATAN'S HOST / Metal From Hell /1986

バンド名もアルバムタイトルも実にストレートに内容を語っているアメリカのカルトメタル。とにかくリスナーがついてこようが立ち止まろうがお構いなしの、わが道を突き進むブラックメタルが端から端まで詰め込まれている。独特の変拍子なのか単にモタっているだけなのか区別のつかないリズム、VENOMを井戸の中で聞いているようなこもった音処理、オカルト映画のようなコーラスなど、カルトっぽさをプンプンと漂わせている作品だ。ここまで自分たちの世界を音にしたこだわりには敬意を払わなければなるまい。全パートが狂ったようにラウドな展開を見せる"King Of Terror"は一聴の価値あり。バンドはギタリストが主導となって今も活動中。今でもすんごい格好とメイクなのだ(笑)。

クサレポイント

強烈なハイトーンを連発するボーカリストの名はLeviathan Thisiren、これはステージネームで、正体はJAG PANZERやTITAN FORCEのボーカリスト、Harry Conklinである。SATAN'S HOSTで聞かせる、肩に力の入ったボーカルも印象的だ。




GRIM REAPER / Rock You To Hell / 1987

GRIM REAPERはEbony Recordsの看板バンドであり、レーベルに所属しながらもアメリカでウケたという点で他のアーティストの中でも異質な存在だった。バンドに加入する以前からレーベルと縁があったSteve Grimmettは、ルックスはともかく(失敬)、聞かせるノドの素晴らしさはケチのつけようがない。3作目となった本作はEbony Recordsを離れ、アメリカのメジャーレーベルからリリースされた作品。プロデュースにMax Normanを迎え特段に音質も向上。それらの要素がかすむくらいに素晴らしいことは、彼らの正統派まっしぐらなメタル魂がまったく翳りもなく実に熱いということだ。小難しい音など一切不要、「これがホントのメタル!」が9曲も詰まった必聴盤。リリース当時に聞いてブッ飛んで以来、いまだに愛聴の一枚だ。

クサレポイント

Steveばかりが表舞台だが、忘れてならないのがバンド創始者でもあるNick Bowcottのカミソリサウンドなギタープレイだ。




CACOPHONY / Speed Metal Symphony / 1987

HAWAIIのリードギタリストとしてマイナーシーンでは確固たる地位を築いていたMarty Friedman。アメリカ本土に渡り、ソロアルバムのレコーディングを画策していたときにマイク・ヴァーニーから若干16歳だったギタリストJason Beckerのデモテープを渡されて、「こいつはすげぇ!」と日本語で言ったかどうかは定かでないが超絶ツインリードのバンドとしてレコーディングする決意を固め、ドラムスとボーカル(LE MANSのPeter Marinoだ!)を募ってプロジェクト的に結成されたのが本作でデビューすることになったCACOPHONYだった。当時流行りだったクラシカルな速弾きを二人そろってハモりながらビシバシとキメてくるのが圧巻。スピード感溢れるリズムはタイトで意外にヘヴィだ。文字通りクラシカルな構成が印象的なタイトルチューンがオススメ。

クサレポイント

ヘビメタさんでお馴染みなMartyはこのCACOPHONYで1989年に来日公演を行ったときの印象が強烈だったそうで、本格的な「日本ツウ」となるきっかけとなったそうな。



CACOPHONY / Go Off ! / 1988

MartyとJasonはCACOPHONYの1stリリース後に揃ってソロアルバムを製作しリリース、その後にCACOPHONYの2ndアルバムとなる本作ををリリースしている。恐ろしく息のあった二人の速弾きに重きを置いた前作の延長線上にはあるものの、凝った曲展開などはテクニカルなハードロックバンドとして聞かせようとする姿が伺える。Martyの東洋的な音階で幕を開ける"Black Cat"がユニーク。ドラムスはMartyのソロアルバムつながりでDean Castronovoがヘルプで叩いている。

クサレポイント

このあとに来日公演を果たしたもののバンドは消滅。MartyはMEGADETHに、JasonはDave Lee Rothのバンドへと加入した。Jasonはその後若くして難病に侵されて、これまでのようにギターが弾けなくなってしまう。けれどもメッセージを届け続ける彼の姿はNever Dieなのだ。頑張れJason