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MERCYFUL FATE / Melissa /1983

1980年前後に結成され、1982年にEbony Recordsのコンピレーションに参加、同年にオランダのRave-On Recordsからミニアルバムをリリースするなど、マニアが唸るレーベルから作品を世に出していた彼らの初めてのフルレンスアルバムが本作だ。Roadrunner Recordsという、そのスジでは大手なレーベルからの作品であり、日本でもリリース当時は話題となった。NWOBHMからの影響が伺えるサウンドを基調として、Hank ShermannとMichael Dennerの、ハードさとメロディアスさが絶妙なコントラストを醸し出すツインリード、なんといってもバンドの顔でもあるKing Diamondのファルセットボーカルが強烈。彼の声は単なるRob Halfordチックではなくて、あのメイクとともに完全にキングになりきっている声なのだ。

クサレポイント

Ebony Recordsに提供した曲の再録となった"Black Funeral"と、ラストのタイトルチューンは必聴クラス。スピードがありながらも単調でない展開、スローであっても間延びしない展開、いずれにも美しく絡むギターと怪しいファルセットが彼らの世界なのだ。




MERCYFUL FATE / Don't Break The Oath / 1984

前作でブチかました衝撃のMERCYFUL FATEの世界を確実に昇華させた傑作。ジャケットもサイコーだ! 聞き手を自分たちの世界に引きずり込もうとして、音から手が出ているかのようだ。キングの歌は語るまでもなくシアトリカルな迫力を増しているが、もっとよく聞いて欲しいのは手数が増えて攻撃的になったドラムスとベース、サタニズムを増したツインリードのメロディだ。初めて聞いた"The Oath"の恐ろしくもカッコいい世界がもう20数年間も耳から離れない。前作と本作とで他に例えようのないMERCYFUL FATEの世界を完全に築き上げたわけで、そういうバンドはなかなかお耳にかかれない。日本でのリリース時の邦題、「禁断の誓い」も印象的だった。本作リリースの翌年4月、Hankが音楽的相違により脱退し、バンドは一旦解散となる。

クサレポイント

Hank以外のメンバーはKING DIAMOND、Hankは驚きのハードポップバンド、FATEを結成、しばしの活動ののち、1993年に再度メンバーが集まりMERCYFUL FATEは再結成された。




HEAVY LOAD / Full Speed At High Level / 1978

流麗なメロディ、キーボードは必須、がそもそもの北欧メタルではないことを証明するバンドの真のデビュー作。ここにはメタルを包含したハードロックが展開されており、Wahlquist兄弟が目指した音楽の原点がある。BUDGIEやSABBATHあたりのブリティッシュハードロックの影響下にある楽曲も、Ragneの熱いギターソロとバッキングは特筆ものだし、StyrbjornのドタバタとしたドラムスはまさにHEAVY LOAD。この音に反応できないで、後のアルバムにのみに反応するわけにはいかない。

クサレポイント

3年後にリリースしたミニアルバム"Metal Conquest"でめでたく初期北欧メタルの祖となり、以降の活躍はPage104で示したとおりだ。バカ正直なメタルを聞かせる数少ない、ホントに好きなバンドだった。



HEIR APPARENT / One Small Voice / 1989

Page29で紹介したプログレ志向のアメリカのバンド。前作リリース後にボーカルが交代、パワーアップしてリリースされた本作はQUEENSRYCHEをもっとメロディアスにしたような劇的なハードプログレの傑作となった。"Just Image"や"Cacophony Of Anger"で聞かせる強烈なプログレマインドと、"Alone Again"で聞かせるしっとりとした泣きのバラードとがバランスよく収録されていて聴き応えがある。隠れた名盤としてオススメしたい一枚だ。

クサレポイント

本作で異彩を放つのがSimon & Garfunkelのカバーである"The Sound Of Silence"。これをカバーするアイデアは簡単なようでなかなか思いつかない。彼らは実直にプレイしていて、好感の持てるバージョンに仕上がっているのだ。