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CHASTAIN / Mystery Of Illusion / 1985

Shrapnel Recordsの速弾きギタリストたちのなかでもおそらく最も存在感のあるDavid T. Chastainがスタジオにてプロジェクト的に始めたバンドの1stアルバム。彼はCJSSでも同時並行で活動しているが、個人的にはこのCHASTAINのほうがインパクトが強い。ほとんどダークな様式美を聞かせるChastainの一人舞台な世界の作品だが、それを強力に後押しする女性ボーカルのLeatherの、ふりしぼるような逞しいボーカルスタイルが素晴らしい。B面トップの"I Fear No Evil"の多才なギターアイデアは圧巻。こんなクサレなジャケットまでも嬉しい(笑)

クサレポイント

1stにしてこの完成度、この後もその才能を持続させ、CHASTAINのアルバムはどれもこれも、当時でも知る人ぞ知る名作が多い。単なる速弾きギターな作品に終わらないところがその魅力だろう。




RAY LYELL AND THE STORM / Another Man's Gun / 1989

HELIXのメンバーとも交流のあるカナダのシンガー・ソングライターのアルバム。HELIXのような直球ハードロックではなくて、アコースティックな音を大事にした、メロディアスなカナディアンロックだ。アメリカで演ると軽い産業ロックになってしまいそうな音だけど、ハスキーな声や枯れた感じのマイナーコード進行など、カナダだからこその味わいを感じることが出来る。本作は日本でも1992年にRAY LYELL BAND名義でリリースされた。

クサレポイント

プロデュースはAPRIL WINEのギタリストだったGary Moffet。こういう人脈もなかなか渋くてよろしい。




HOLOCAUST / The Nightcomers / 1981

英国のエディンバラのバンド。NWOBHMのバンドの中では最も北に位置するバンドといえる。いかついバンド名から受ける印象とは違い、ハードブギーなオープニングの"Smokin Values"から始まるノリは最後まで首が縦に振れてしまうくらいカッコよい。一発録音な生々しさとどこか調子ハズレなボーカルも、これはこれでいいアジだしている。NWOBHMの名曲として名を残した"Heavy Metal Mania"は何度聞いてもゾクゾクさせられる。音は技術じゃなくて魂なのだ。CDじゃなくてレコードで聞くべきアルバムの筆頭。

クサレポイント

P133で紹介したライヴアルバムとともに、本作はNWOBHMでもよく語られる作品だ。METALLICAのカバーによるNWOBHMブームに乗って復活、いまも活動中だ。



ZINATRA / The Great Escape / 1990

オランダのキラキラハードポップ、と思っているとしっかりとツインリードで叙情的なメロディを畳み掛けてくるサウンドだ。DEF LEPPARDのPhil Collenのヘルプを受けてデビュー、本作は2ndアルバムになり、あの「オランダの貴公子」という、今だから笑えるキャッチフレーズでお馴染みのRobby Valentineがメンバーとしてクレジットされている。彼のノドが聞ける"Love Never Die"はクサいタイトルどおりのラブバラード。他にもROKOのメンバーが参加している。

クサレポイント

この時期の彼らのライヴはチアガールがステージに登場していたらしい。プレスにも「ハッピーメタル」と表現されていたとか。う〜む、ハッピーも結構だが憂いあるメロディはどこに行ってしまったんだろう。