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PHANTOM / Dead Or Alive / 1987

たった一週間でレコーディングされ、New Renaissance Recordsからリリースされた作品でPHANTOMのデビュー作となるアルバム。勢いだけは満点なノリだがたいてい内容は伴わない、のがマイナーなメタルの悲しいところであるが、本作はそのマイナスの期待は裏切り、なかなかの好作である。ギターを初めとして音の悪さは話すまでもないけれど、ツーバスで猪突猛進なパワーメタルを聞かせてくれるところと、しっかりとしたメロディを主体にしたミドルテンポを聞かせてくれるところなど、メリハリも効いている。JUDAS PRIEST型のパワーメタルだけれどシンセをところどころ取り入れているのもユニーク。

クサレポイント

そもそもバンドの形態をなさないままデビューしたとのことで、本作リリース後にメンバーは散り散りとなり、再度ボーカルのFalcon Eddieがバンドを建て直し、さらに2枚のアルバムをリリース。 そのFalcon Eddieはロブ・ハルフォードっぽさを増していった。



ANGELO PERLEPE'S MYSTERY / Mystery / 1991

ギリシャにはけっこう隠れたいいバンドがたくさんある、って話はよく聞く。ギタリストのAngelo Perlepeが率いるMYSTERYも、その存在はほとんど知られていなかったけど、このデビュー作の強烈にクサクサな様式美が知られると「幻の名盤」的な扱いとなり、レア盤としてその名を轟かせることになった。とにかく笑ってしまうくらいにイングウェイの世界を辿っている。アルカトラス時代のイングウェイ、レインボーを弾いたようなイングウェイ、北欧メタルに舞い戻ったイングウェイ、などなどいろいろなイングウェイを感じられる様式美だが、あまりにクサくて嬉し涙が止まらない。

クサレポイント

ご安心あれ、たしか本作はCD復刻され、レアという憎っくき言葉を退治してたやすく耳に入るようになった。




UNRULY CHILD / S.T. / 1992

STONE FURYのBruce GowdyやKING KOBRAのMark Freeといった人たちが名を連ねた、秀逸なメロディックハードを聞かせてくれるバンド。余裕ながらも熱いプレイを音と楽曲に込めた作品であり、この時代のアメリカのロックシーンがグランジ一色だった不幸を乗り越えられなかったのが実に惜しい。Markはこのあと一枚のソロアルバムをリリースした後に性転換手術を受けて女性となり、さらにMarcie Freeと名乗ってソロアルバムをリリースしているが、その内容は実質的にはこのUNRULY CHILDの2ndアルバムとして録音されていたものだった。いまも彼女は活動中だ。

クサレポイント

で、UNRULY CHILDはと言うと、こちらはBruceを中心として活動を続けた。