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TRANCE MISSION / Back In Trance / 1989

Page 129で紹介した、玄人ウケ度では右に出るもののないジャーマンメタル・こってり部門の至宝であるTRANCEが改名し、アカ抜けたサウンドで皆の度肝を抜いた4thアルバム。RAINBOWのような曲や、メジャーコードを多様した曲が並んでいるが、真にアカ抜けられるハズもなく、ドイツ演歌のコブシを聞かせる"Power Of The Heart"や、明るい中にもクッサクサなメロディが涙笑いを誘いつつ、タイトルだけならGAMMA RAYだけど実はもっとコテコテな"Heaven Can Burn"、巻き舌な歌いまわしが素晴らしい"Zombie Town"などなど、TRANCEの世界はキープしている作品だ。この、Lothar Antoniの声が健在な限り、愛すべきTRANCEのクサクサな世界は不滅なハズなのである。

クサレポイント

TRANCE MISSIONと名乗り、イメージを一新するかのごときアルバムだが、こういう器用貧乏ながらツボをグイグイと刺激する音は諸手を上げて支援したいと思うのだ。愛すべき名盤の一枚。



TRANCE / Rockers / 1991

結局またバンド名をTRANCEに戻しての5th。ピカピカのロゴマークやMausoleum Recordsからのリリースなどは嬉しいことだが、内容はこれまでのクサさが薄れてなんとも聞きやすいハードロックになってしまった。Lothar Antoniの声は相変わらずで安心ながら、ギターが歪んでいない曲などはTRANCEらしさをほとんど感じられなくて残念。アルバムの半分がそういった展開で、これらの変化への配慮なのか、3rdアルバムに収録されていたクサクサな名曲、"Break The Chains"のライヴテイクも収録されている。"Silent Cries"がなども従来のTRANCE路線でホッとさせられるのだ。

クサレポイント

一番のオドロキが、"When A Man Loves A Woman"を本家のPercy Sledgeとのデュエットでカバー。何だこのオヤジカラオケな世界は。嘆かわしいというよりは、何でもありなTRANCEだから許せる、といった感じである。




LOSTBOYS / Lost And Found / 1990

Page 65で紹介したODINが母体となるバンド。ODINとはまた一味違った、軽めのハードロックを聞かせてくれるアルバムだが、幼稚なイメージのするバンド名は彼らにとってホントに良かったのだろうかと思わずにおれない。とはいえ、Randy Oのボーカルは、搾り出すような唱法の割りに表現力が乏しくて、ODINのころからあまり成長していないように感じる。

クサレポイント

結局はトップの"Cryin' Out"しか耳に残らないアルバムでもある。元ODINということを知らなければ、聞くこともなかったかも知れない。