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NUTZ / S.T. / 1974

ずいぶんと古い作品を引っ張り出してきたが、のちのちNWOBHMにつながる人たちなのでこの際全部記事にしてみた。NUTZはリヴァプール出身の4人組。Mick Devonport、Dave Lloyd、Keith Mulholland、John Mylettという優れた演奏テクを持つ若者たちが結成したこのバンドは、知る人ぞ知るという存在ではあるが純然たるブリティッシュロックの名バンドだ。ヘヴィ過ぎず軽過ぎずで聞きやすいメロディを聞かせ てくれる。このデビュー作は日本でもリリースされたとのこと。
クサレポイント

ジャケットがイイですなぁ(笑)。このコンセプト(と言えるのだろうか(^^ゞ)は、のちのちまで受け継がれていったということを知っておくと面白いだろう。



NUTZ / Too / 1975

ギターの音がブ厚くなって、ヘヴィなハードロックへの傾倒が伺える作品。Mike Devonportのギターはこの時点ですでにヘヴィメタルへの準備が完了している。"Sinner"、"Knife Edge"という地味ながら英国の薫り高いハードロックが収められたアルバムだ。
クサレポイント

今回のジャケットは地味だなぁと思いきや、裏ジャケはこんな風だったので一安心(^^ゞ



NUTZ / Hard Nutz / 1977

前作リリース後はBLACK SABBATHのツアーに同行したりレディングフェスティヴァルに参加したりとライヴを積み重ねて時間を過ごしていた らしい。その間紆余曲折あり、メンバーにキーボードのKenny Newtonを加えて5人組になってレコーディングされたのが本作。この時代は英国内ではなんといってもパンクが大流行していたころで、生粋のハードロックである彼らには辛い時期だったろう。このころのツアーは主にBADGIEと組んでいたそうだ。見てみたかったなぁ。

クサレポイント

この作品は70年代臭さからは少し脱却した感のあるハードロック。キーボードが加入しオルガンの音色などもバックを固めていて品の良い新しいハードロックといった感じだ。URIAH HEEPやDEEP PURPLEのもつメロディを少しだけ感じることが出来る。意外に目立っている新メンバーのKenny Newtonの仕事も素晴らしい。"Wallbanger"は驚くことにツーバスでガンガン攻める速い曲。この曲が出来たからNWOBHMでも活 動を続けられたといっても過言ではないだろう。



NUTZ / Live Cutz / 1977

彼らがライヴバンドであったことを証明する好ライヴアルバム。ドラムスのJohn Mylettの手数が多く力強いドラミングがとくに素晴らしい。私が選ぶとしたらNUTZのベストアルバムは本作だ。パンク全盛という背景がなかったらトップバンドになっていたバンドだということが、熱く引き締まった演奏が物語っている。"Wallbanger"も収録されていて言うことなし。

クサレポイント

実はレコード会社との中がしっくりいっていなかった彼らは本作をもってドロップアウトしてしまい、ブリティッシュロック→ブリティッシュメタルへの変化を遂げようとしているときに活動を停止してしまった。同じ時期、キーボードのKenny Newtonもバンドを離れてしまう。ちなみに彼はNIGHTWINGを結成、ブリティッシュロックの歴史に名を残すことになる。



RAGE / Out Of Control / 1983

レコード会社からドロップアウトしてしまったあとライヴを繰り返していたもののくすぶっていた彼らではあったが、この時期の作品である"Bootligger"がニール・ケイの耳にとまり、彼の監修でリリースされた"Metal For Muthas"に収録されたことで再び彼らはシーンに戻っ てきた。パンクムーヴメントは去り、"Metal For Muthas"がもたらしたNWOBHMというムーヴメントも彼らに追い風となった。その"Bootligger"は収録されていないが、バンド名をRAGEと改め再出発を図った作品が本作。メンバーは1974年当時と同じだ。リリースはSAXSONやDEMONでお馴染みのフランスのCARREREレーベルからで、写真でご覧のアメリカ盤のタイトルは"RAGE"であった。

クサレポイント

"Bootligger"は彼らの名曲である"Wallbanger"の路線をさらに強くメタル化した曲で、NWOBHM屈指のリフを聞かせてくれる。本作では他のシングルカット曲の"Money"と"Out Of Control"を収録。



RAGE / Nice'n' Dirty / 1982

バンドとしてセールスが一番良かったのが本作だろう。もう一人のギタリストTony Steersを加えて再び5人組になっており、曲自体もかなりメロディアスな作風に変わってきたけど、リフを中心にしたNWOBHMなノリは変わらない。同じリヴァプールのバンドEXPORTのギタリスト、Stave Morrisがアルバム製作の手伝いをしている。本作のハイライトは"Woman"と"Heartbreaker"。PRAYING MANTISのようなキメの多いメロディはいつ聞いても素晴らしい。"Blame It On The Night"はJoe Lynn Turnerでお馴染みのFANDANGOの曲のカバー。奇しくも同じ英国の バンド、ALKATRAZZも2ndアルバムでこの曲をカバーしていた。

クサレポイント

前作もそうだったが、ジャケット違いが多くあるバンドだ。アメリカ盤はこんな風だが、どっちにしてもジャケットがイイですなぁ(笑)。あ、やはりNUTZのデビュー作と同じコメントになってしまいました(笑)。



RAGE / Run For The Night / 1983

本作でかなり曲の作風が変わってしまった。荒々しいリフとメロディアスな部分のバランスが絶妙だった前作に比べ、出だしからこれはもうアメリカン産業ロックのようだ。このバンドにこの音は求めていないファンが多かったにの、という気持ちは正解だろう。かろうじ て"Ladykiller"あたりに前作の面影も残している。しかし一方で本作が優秀なメロディックロックであることには間違いない。前作で手伝ったStave Morrisは本作では1曲だけ歌も歌っている。メロディック派は要チェック。

クサレポイント

アルバムリリース後、Carrere Recordsの経営トラブルの影響でRAGEの活動は停止してしまう。直後にドラムスのJohn Mylettがスペインで自動車事故により他界。バンドは復活することができなくなってしまったのが実に残念だった。