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MORE / Warhead / 1981

巨漢ギタリストのKenny Cox率いるMOREのメジャーデビュー作。前年にBBCライヴのコンピレーションに参加しNWOBHMの波に乗っての本作リリースで、このあとはモンスターズ・オブ・ロックやドニントンのステージに立つなど、成功をおさめた人たちだ。荒々しいハードロック、というイメージが先行しているけどけっこうメロディアスな部分もある。もともとブルーズ畑の人だったKenny Coxのギターはなるほど泣きのトーンがあちこちに散りばめられている。"Depression"などはその典型だ。他にアーサー・ブラウンの"Fire"のカバーがあるけどこれは余計。日本でも「必殺の弾丸」というステキな邦題でリリースされた。
クサレポイント

そしてなんといってもリードボーカルのPaul Mario Dayのノドも聞き手を唸らせるだろう。残念なことに次作のレコーディング直前にメンバーの力量に不満を抱いた彼はバンドから脱退してしまった。その足で新たなバンド結成を図りベルギーに向かい、Alfie Falkenbach氏に出会ってMausoleum Recordsのディールを得てWILDFIREのボーカリストとして再出発を遂げたのだった。MORE加入前には短期間IRON MAIDENに在籍していたり、WILDFIREの後にはSWEETに加入したりと多彩な経歴の持ち主だ。



MORE / Blood & Thunder / 1982

キャラクター的にPage 22で紹介したRUSTY DUMPY NUTSのDumpy Dunnell氏とイメージがダブるKenny Cox氏ではあるが、ジャケット写真のとおり彼のトレードマークはギブソンのフライングVであった。Michael SchenkerかKenny Coxか、というぐらいである(ウソ(^^ゞ)。2ndアルバムはレコーディング直前に脱退してしまったPaul Mario Dayに代えてMick Strattonを迎え、彼を中心にして全曲を練り直してのレコーディングになった。Mick StrattonはRobert Plantタイプのボーカリスト。ボーカルパートのみ別のスタジオで録音している。アルバムとしては前作よりも少し攻撃的でソリッドな感じに仕上がっており、良質なNWOBHMだといえる。
クサレポイント

てなことで良質でホンモノのハードロックを聞かせてくれるMOREであったが残念ながら本作をもって消滅。Kenny Coxは巨漢を生かして、メンバー全員がおデブという英国屈指のスーパーバンド、MAMMOTHに加入しアルバムを残した。MAMMOTHでの彼もフライングVを手放さないお姿には、その変わらぬロックスピリットに頭が下がるのだ。



SHIVA / Fire Dance / 1982

NWOBHMにおいてかなり異彩を放っていたバンド。それはボーカルのJohn Hallの爬虫類的な声質とメタルともプログレとも解釈のつかない不思議な音楽性によるものだろう。Heavy Metal RecordsからのリリースであったのでNWOBHMのバンドということになっているが、その枠は飛び越えていると思う。

クサレポイント

1曲1曲がどうこうではなく、アルバム全体を捉えて聞きたい作品。加工された紙質が効果的なこの不思議なジャケットも、見つめていると引き込まれそうな感じだ。てことでCDではなくアナログで味わって欲しい一枚。



PHASSLAYNE / Cut It Up / 1985

Neat Recordsからのリリースだが嬉しくなるほど音が悪い。しかしここに込められた魂は紛れもなくNWOBHM直系のストレートなヘヴィメタルだ。誰が何と言おうが突っ走るだけだぜ!としか聞こえないギターとドラムスが聞き手の心を揺さぶる。こういう作品に事細かに注文をつけることは野暮だってもんだ。

クサレポイント

10曲も収録されているが、ほとんどすべて同じ曲に聞こえる、てところもこういうバンドの良いところだ(^^ゞ。



LONE WOLF / Nobody's Move / 1984

個人的にNWOBHMの神様と崇め奉っているBrian RossがBLITZKRIEG〜AVENGER〜SATANの後、一時ボーカリストを引退しマネージャー業に転職していた時期に関わったのがこのLONE WOLFだった。バンドのマネージャーだったハズなのに、オリジナルボーカリストが都合で脱退してしまったあとにマネージャーである自分がボーカルに納まるという掟破りの逆十字、そうしてメンバーになってリリースした3曲入りのミニアルバムが本作だ。経緯はどうであれ彼が歌えばすべてNWOBHMである。だから本作もNWOBHMの名作なのだ。

クサレポイント

しかし実際にこのバンドはカッコよい。タイトルトラックからはギタリストのセンスの良さがヒシヒシ伝わる。