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FIST / Round One / 1979 FISTはRonとJohnのChenier兄弟によって結成されたバンドで、カナダのトロントを中心に活動していた。英国にも同じ名のグループがあり、どちらもそこそこ知られた存在なので混同に注意。さてデビュー作である本作はスペイシーなキーボードが幅をきかせた音作りであり、カナダのバンドらしい音。このテの音は先輩格のSAGAやPRISMの方がレベルが上ではあるが、デビュー作がこれだけの水準であるのは驚きだ。曲によってはハードロックのエッセンスがまぶされていてNWOBHMと同じスピリットを感じるものもあるが、全体的にはSTYXあたりの音に近いだろう。 クサレポイント Cheinier兄弟の長兄でありメンバーには加わらなかったNormand Chenierがプロデューサーとなり自主制作されたアルバムで、かなりの低予算だったらしい。 |
FIST / Hot Spikes / 1980 メジャーのA&M Recordsとの契約後の2ndアルバムで、デビュー作と同じメンバーでレコーディングされた。MAX WEBSTERやTRIUMPHといった名うてのアーティストとのツアーを成功させ、音にもその自信が溢れている。基本には前作同様にキーボードが幅をきかせるスタイルだがオルガンの音色が増えた分、少しプログレチックなところは後退しアメリカン産業ロックっぽくなっているのでメロディック派は要チェック。ベースとギターとがリードボーカルを分け合っているが、リーダーでギターのRon Chenieのボーカルはオヤジ声なので彼がリードの曲は少しクサレな雰囲気を醸し出している。 クサレポイント こんな拳で殴られたら痛いだろうねぇ。親指なんてツメまでトゲトゲだ。まさにアイアンフィストだ。しかしこのジャケットだけで買って全編クサレを期待すると、ちょっとハズれだろう。 |
FIST / Fleet Street / 1981 本作ではドラムスのJohn ChenierがBob Pattersonに、キーボードのEdmund EaganがIvan Tesseierにメンバーチェンジ。メインボーカルもRon Chenierになりハードロック度が増した。ハモンドオルガンを主体にしたキーボードのお陰でDEEP PURPLEっぽく仕上がっている曲が多く、ストレートなハードロックが楽しめる快作。もともと演奏力もある人たちだから安心して聞いていられる。本作のセールスは好調で、結果的にバンドはMonsters of Rockに参加するまでに成長した。 クサレポイント この作品は、アメリカでは"Thunder In Rock"のタイトルで、どか〜ん!って感じのこんなジャケットでリリースされた。個人的にはこちらの方がステキだと思う(^^ゞ。 |
FIST / In The Red / 1983 本作からバンドはリードボーカリストを一人追加して5人組になった。てことでRon Chenierが歌っていないのがちと残念、ついでにまたまたドラムスがメンバーチェンジしている。リードボーカルは伸びやかに歌うタイプで、デビュー当時のプログレ然としたスタイルは全くなくなり、メロディックでツボを押さえた良質なカナディアン・ハードロックに仕上がっている。ハモンドオルガンが疾走する"Undercover Lover"はなかなかの名曲なので一度は聞いておこう。エンジニアは後に再結成DEEP PURPLEで仕事をすることになるNick Blagona。 クサレポイント メンバーの力量や作品からも本作が彼らの最高作だと思うのだ。メロディック派はこの作品も要チェック。 |
FIST / Danger Zone / 1985 前作で加入したリードボーカリストは結局一作のみで脱退し、バンドは再び4人組に戻った。また、ベーシストのJeff Nystromが全曲の作曲に関わっただけでレコーディングには参加せずBob Moffatに交代したことで、バンド創設以来のオリジナルメンバーはRon Chenierだけになった。ということでリードボーカルは再びギター兼用でRon Chenierのお仕事となり、曲のクオリティは前作とさして変わらないものの、"I will Remember"のようなメロメロなハードロックでも彼のオヤジ声のお陰でずいぶんと骨太なロックになった錯覚を覚える。 クサレポイント 優秀なメロディックロックのアルバムではあるが前作ほどのインパクトはなく、セールス的にもイマイチだったため、1986年になってバンドはいったん活動停止してしまったようだ。 |
FIST / Reign Of Terror / 1993 しばらくの沈黙のあと1991年にライヴ活動を再開させ、1993年に通算6枚目になる本作をリリース。全曲Ron Chenierと先代のベーシストJeff Nystromの二人が作った曲(昔のマテリアルだったのだろうか)であるが、ギターリフ中心となったサウンドプロデュースのおかげでかなり正統派メタルな作品になっている。実年齢も声質も晴れてオヤジとなったRon Chenierが作り出す曲はJUDAS PRIESTのようであり、ハモンドオルガンを真ん中に持ってきた曲はDEEP PURPLEのようでもあるのだ。BEATLESのカバーもあるがこれもユニークな仕上がりだ。ジャケットとタイトルのせいでどうしてもコアなイメージをひきずってしまったのが残念。 クサレポイント "Mascle Gun"は前作でシングルカットされた曲のリメイクで、リフ中心のメタルな仕上がりになっている。"Anything Goes〜Reign Of Terror"は10分近くの大作だが、80年代のメタルを基調にしたようなどこか懐かしい感じのする快作だ。ハモンドソロで幕をあける"Under My Wheel"にも悶絶歓喜の涙。正統派メタルでありメロディックでありと、オススメな一枚だ。 |
FIST / Loud Loud Loud / 1995 「なんですか〜」って感じのジャケットだが、彼らの7作目にして今のところ最新作。もう余裕でプレイしている。ハモンドも快調に鳴っているので相変わらずのメタルスピリットを楽しめる作品だ。欲を言えばもう少しインパクトのある曲が欲しいところか。ミドルテンポ中心なのがちょっと残念。 クサレポイント で、気がつけばロゴマークは一度も同じものを使わないバンドだが(笑)、2003年の現在もこのバンドは活動中である。まったくもってタフな人たちだ。カナダでは現存する伝説的なアーティストとして人気があるそうだ。 |