○出会い○

 1994年、神戸にある、メタルマニアにはお馴染みのメタルCD専門店の「ブルーベル・レコード」で私は初めて彼らの作品に出会った。
何度となく訪れていたこの店で目にしたのは、「British Rock Festival」と名付けられた一枚のオムニバスアルバム。収録されたアーティストはJohn Verityを除き、全く聞いたことのないものばかりだった。

 ジャケットのイラストといい、タイトルといい、この収録内容といい、これは久々にB級メタルがつまったアルバムだと考え、さっそく購入。

 自宅に戻りアルバムを聴きながら、う〜ん、ちょっとハズレなアーティストが多いなぁ〜などとボヤきつつインナーを見ると、これまたおそろしくB級なルックスを持つアーティストばかり

 さらによく見れば、このアルバムをリリースした「DRIVE」なるレーベルはドイツのレーベルであった。また、ディスクはスイスでプレスされたもののようだ。このへん実に怪しげ。かといって、音のクオリティからしてブートレッグとは考えられない。だいいち、こんなマイナなアーティストたちのブートなど、存在意義がない。

 ・・・などと考えながら、アルバムは残すところ2曲となり、このアルバムもCDラックで眠る運命かと思ったところで、その曲は始まった。

 「In The Middle Of The Forest」と名付けられたこの曲。

 ・・・なんと言ったらよいのだろうか、メロディアス、アグレッシヴ、パワフル、そして適度にクサい。
 イントロから絡むキーボードは延々とメロディを奏で、ドラムスはキメやフィルインを多用して実にバリエーション豊か、ギターはキーボードとのツイン構成でメロディを弾き、 時にはリードをとり、時にはバッキングに徹する。そしてボーカルはパワフルで男らしさを全面に押し出すものの、ありがちなオッサン声ではなく、若々しい。ときおり音程がはずれるのも、いにしえのNWOBHMの愛好家あたりには間違いなく支持されるスタイルだ。

 曲の構成も素晴らしい。PRAYING MANTISの「Children Of The Earth」を彷彿とさせる歌メロと、中間部でみせる、北欧然とした実にクラシカルな展開、そして全体を包むトーンはジャーマンメタルっぽかったりで、それらののコントラストの見事なこと!

 私は凍り付いたようにスピーカに体を向け、じっと聞き入っていた。実にスピーディなこの曲はエンディング部でまた違った展開をみせ、呆気にとられる私に構わず、劇的に終わったのだ。

 「うぉ・・・っ」

 インナーでこの曲のことを確かめてみる。スピーカーからは次のアーティストの曲が流れていたがもはや耳に入ることはない。

 「ノルウェーのバンド。最高のライヴ・バンドである。 彼らの”Blind Leading The Blind”アルバムでもそのことは証明できるだろう」

 バンド名は「BLIND ORPHANS」(ブラインド・オーファンズ。以下「ブラオー」と略する)であった・・・。

 「アルバムがあるのか!」

 こうして長いブラオー探索の旅は始まった・・・。そのときはまだ、長くなる旅だとは気づかないままに・・・。

 探索期へ