Blind Orphans Biography    

   


 

 1986年、ノルウェー人のTorbjorn Dybsand(Drums)Rune Hansen(Guitar)が中心となってBlind Orphansは結成された。当初「Big Boners」と名乗っていたバンド名を「Blind Orphans」と改め、数回のメンバーチェンジを経てTorbjorn、Runeと、Sven Kaare Sunde(Vocal)Bjorn Thommassen(Bass)Lars Christian Narum(Keyboard)というラインナップに落ち着き、ライヴ活動を展開していた。ステージではオリジナル曲のほか、Genesis, Jethro Tull, Marillion, などのプログレッシヴロックのカバー曲も演奏していたという。また、面白い試みとして、クラッシック音楽をHMスタイルで演奏することなどにも取り組んでいた。
 ちなみにBlind Orphansの名の由来は、DEEP PURPLEの"When A Blind Man Cries"と、THIN LIZZYの"Saga Of The Ageing Orphan"からきている。

 

 彼らは主にシンフォニックロックに大きな影響を受けていたようで、当時のフェイヴァリット・アーティストにピーター・ガブリエルのいた頃のGenesisを挙げている。
 同時にメンバーはDeep PurpleThin LizzyなどのHeavy RockやNWOBHMのバンドたちにも影響を受けている。このことは、彼らの音楽性がシンフォニックな部分とアグレッシヴな部分との融合であると物語ることであり、興味深いポイントである。

 

 1989年になり、国内においてこなした数回のライヴで良い反応を得た彼らは次なるプロジェクトに野心を抱いた。自らのマテリアルを音源として残すこと、レコーディングであった。しかしながら直前にBjornとLars Christianが経済的理由でバンドを離れた。残ったメンバーは新たなメンバーの補充はせず、Sven Kaareがベースを、Torbjornがキーボードを担当し、レコーディングは開始されたのだ。この時に録音された曲は8曲、すべてTorbjornの手によるもので、彼はアレンジまでこなした。そのなかで1曲はボツテイクとされ、残る7曲がデモテープ用にトラックダウンされた。こうして彼らの音源である「Blind leading the blind」は完成した。当時で24,000ポンドを費やしてレコーディングされただけあって、音のクオリティはデモテープの域をはるかに超えているものであった。

 

 こうしてデモテープとして残ったアルバムの完成度は凄まじく高い。プログレッシヴなスタイルにこだわりながら、時折ハードロックが顔を覗かせるというアプローチは、奇しくも今日本で主流のハードロックスタイルに近いといえよう。1989年といえば、Bon Jovi、Skid Rowなどのバンドがノルウェーのチャートにおいても主流であったため、Blind Orphansのようなスタイルのバンドが音楽業界に入る余地はなかった。つまり、彼らは「10年早くシーンに出てしまった」バンドであるといえよう。

 

 レコーディング終了後、当然に彼らはヨーロッパ中のレコード会社とディール獲得のための交渉をはじめた。前述のようなシーンの状況もあり、彼らに良い返事がもたらされることはついになかった。
 多額の費用を費やしてしまい、それでもディールを得られなかったかれらは失望し、1990年、気まずいムードの中、バンドは解散してしまった。そして宝石のような輝きをもったあのデモテープアルバムも、人知れず闇に眠ることとなった。4年後におかしな日本人がそれを叩き起こすまでの間・・・。

 

 Blind Orphansの解散後、リーダーのTorbjornはTimeというバンドに加入した。そこではSteppen WolfLed Zeppelinなど、いわゆるオールド・ヒッピーなスタイルに傾倒していたという。メンバーにフルート奏者がいて、やはりJethro Tullなども好んでカバーしていたらしい。
 しかし、このバントのメンバーには、なにかとルーズでろくに練習もしない人たちがいたため、まず彼らをクビにし、女性シンガーを加入させ、当初考えていたバンド名、
「NipponGakki (ニッポンガッキ)」断念して、正式にはKlondikeという名に改めて再スタートを図ることになる。 このバンドにはRuneも参加している。
 けれども自主レコードディールを興し、フルレンスアルバム用にレコーディングも完了しておきながら、このバンドはあえなく解散してしまう。Torbjornはこのことに飽き飽きし、さらに別のバンドへ加入することにした。そのバンドはGlowである。

 

 Glowは、Torbjornと同じくBlind OrphansのメンバーであったSven Kaareに、1987年のノルウェーの音楽チャートで第3位まで上がったヒット曲「Downtown」を生み出したポップグループOne 2 Manyのメンバーであった、Jan Gisle Ytterdal(Guitar)、Dag Veidal(Keyboard)というメンバーで構成されている。現在も活動中で、2003年にはめでたくアルバムリリースを果たしている。

 

 また、Blind OrphansのオリジナルメンバーであったギタリストのRuneはJack In The Boxに加入した。Jack In The BoxはTNTのロニー・ル・テクロに見出されたバンドで、グルーヴィー感を全面に押し出す、Alternative Rockに近いスタイルのバンドであったが、アメリカあたりの同種のバンドに比べるとヨーロッパのバンドらしい、聞き易いメロディも持ち合わせている。彼らは1枚のアルバムを残しており、ヨーロッパ圏でスマッシュヒットとなった。
 このあとボーカリストをチェンジし、バンド名もAutopluverと改名、Jack In The Box時代よりはメロディアスなスタイルでアルバムをリリースしている。こちらは日本では未発売、ノルウェー、オランダを中心にツアーなどのライヴ活動を展開していた。現在は
Jack In The Boxを復活させようと取り組んでいる。


 
Blind Orphansはアルバムカセットリリースから20周年を経過したことの記念として、一夜限りの再結成ライブを敢行。2009年10月3日、地元ハーマルにて彼らを慕う多くの観客の前で、アルバム全ての曲を堂々と演奏した。この日の記録と1989年のスタジオ音源はCDとDVDのカップリングで2012年6月にリリースされることとなった。