Blind Orphans / Blind Leading The Blind demo cassette tape / 1989

 

A side

1.  In the middle of the forest

2.  Beneath the surface

3.  Circus of rock

4.  Distant Light

B side 1.  Song for loser

2.  Scar in the depth of my mind

3.  Legacy

Rune Hansen : Guitar
Sven Kaare Sunde : Lead & Backing Vocal , Bass
Torbjorn Dybsand : Drums , Percussion , Keyboards




  ト−タルで50分を超える収録時間からもわかるように、このアルバムはデモ音源であるものの、すでに完成されたアルバムとしても充分通用する。中世のヨーロッパを舞台に繰り広げられるストーリーをコンセプトに、各曲ともバランスよく並べられており一気に聴いても50分という長さを感じさせない。

 A-1は、ハードロック然としたパワー溢れる展開と、北欧のバンド独特の叙情性に満ちたメロディとが見事に融和した、まさに隠れた名曲といえよう。A-2はポップなイントロで始まるも、中間部の展開はやはり北欧の哀愁あふれる泣きのメロディを聞かせてくれる。B-1は流れるようなメロディラインが印象的なアップテンポな曲、サビの部分が頭に残り、印象深い。B-2も幻想的なピアノの音と哀愁味あふれるメロディはハートに訴えかける力を持っている。そしてハイライトは16分を超える大作のB-3、静かなイントロで始まり、まるで物語を読んでいるかのような展開でリズムの強弱をバランスよくならべたメロディが次から次へと流れ出す。それはまさにHRの手法とプログレッシヴロックの手法が見事に合体した姿であって、実に聴き応えのある一曲といえる。

 全ての曲の作詞・作曲・編曲・プロデュースはTorbjornによるものである。彼について少し述べておこう。彼は前述のとおり、マルチプレイヤーぶりをこのアルバムで発揮している。8歳のころからドラムをプレイしており、10代のころにはすでに数々のアマチュアバンドで Judas PristやDioの曲をカバーしていたようだ。「ドラムス」が彼のメインパートであるが、このアルバムで聴くことの出来る、実に表現豊かなキーボードプレイについても特筆すべきものがある。

 例えばA-1で延々とメロディを奏でるキーボードプレイや、16分を超える大作のB-3での音色豊かなキーボードは、それぞれの曲において重要な役割を果たしている。驚くべき事にこれらのキーボードプレイについては、彼は全く独学的に学んだとのことで、専門的には学んではいないということ、つまりあくまでドラムスがメインであり、キーボードはサイドワークであるという点である。

 このような才能溢れるミュージシャンが作り出した作品は、世に出てしかるべきであり、「ディールを与えなかった」ヨーロッパのレコードレーベルたちは、まさに「見る目がない=Blind」であったと思わざるを得ない。

 結局のところブラオーがオフィシャルにリリースしたのは、このデモカセットテープのみであった。アルバムジャケットはアントワープとブリュッセルで活躍した細かい描写が特徴的なフランドルの画家、Pieter Bruegelの1568年の作品"The Parable of the Blind Leading The Blind" 。

 ブラオー日記の「達成期」でも述べたとおり、この作品はスイスのレーベル(今はもう存在しないらしい)から彼らの許可なしにCDリリースされている。このCDはイリーガル、すなわちブートレッグということになる。ちなみにこのCDのアルバムジャケットは、Bruegelの絵の前の部分がカットされていて、タイトルの意味に合わないものになってしまっている。



ブートレッグCD


 ブラオーは必死になってディールを求めたが叶わぬ夢となって消え去った。そしてこの作品だけが残ったのである。後のメンバーの活動は別章をご覧いただきたい。

 時は流れ2009年10月3日(土)、彼らは地元ノルウェーのハーマルにあるライブハウス、ハイドランテンで結成20周年のコンサートとして一夜限りの再結成ライブを行っている。当夜は彼らを支持する多くのノルウェー人で会場はいっぱいとなったが、知らせを聞かされた私も日本からひとっ飛びし、その場に参加した。