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PILEDRIVER / Metal Inquisition / 1985

出ましたアメリカのクサレメタル、当時のマニアが泣いて喜ぶバンドだ。ジャケ写の笑顔がお茶目なリードボーカルの「パイルドライヴァー」氏のプロジェクト的なバンドであり、くだらない名を付けられた他のメンバーは全く正体不明。彼の爬虫類的で自由奔放なボーカルスタイルは好き嫌いの分かれるところだ。単調でつまらないリフが延々続く"Witch Hunt"は、それでも不思議と耳に残ってしまうから悔しい。他にも"Metal Inquisition"のプラグ点火の効果音などもごくごく一部のマニアの間では語り継がれている音だ。"Alien Rape"や"Sex With Satan"なんていう凄いタイトルの曲も魅力的だ。

クサレポイント

パイルドライヴァー氏の、へヴィーなボーカルはそれなりに評価してもいいが、いかんせんバックのメンバーの演奏力が弱すぎる。"Alien Rape"以外、ろくにメロディを弾けない2人のギタリストには幻滅。



PILEDRIVER / Stay Ugly / 1986

ジャケットだけでは前作と本作と、どちらか2ndアルバムなのかが分からないのがまた魅力(笑)。こちらのアルバムでは前作にくらべ、まず音のバランスが良くなっているために聞きやすいメタルになっていて、よりスラッシュよりの、ツーバス中心のパワーメタルに仕上がっている。前作がカルトな雰囲気に包まれていたのに対し、本作はストレートなパワーメタルだ。雷の音、バイクの音、美女の悲鳴にバスドラがドコドコドコ・・・とくれば首も自然と激しく揺れるのだ。"The Incubus"、"The Executioner"など、隠れた名曲あり。

クサレポイント

前作同様、ボーカルのパイルドライヴァー氏中心のバンドであることは、彼とベーシスト以外のメンバーが一新されていることでも分かる。実はこのパイルドライヴァー氏、本名はGord Kirchinといって、当コーナーの11ページでレビューしたCONVICTのリードボーカルでもあるようだ。彼がレコード会社に持ちかけられて、アルバムのみのアーティストとして結成されたのがこのPILEDRIVER、バンドとしての形態はなかったらしい。



HEIR APPARENT / Graceful Inheritance / 1985

フランスのBlack Dragon Recordsからのリリースだが、バンドはアメリカ・シアトル出身だ。摩訶不思議なジャケットは何を表したいのか分からないが、音の方はよい出来である。プログレ的な展開を見せる曲が特長だが、昨今のテクニカルプログレのような、カクカクした印象はなく意外とサラリと聞けてしまうのが不思議な魅力。一本調子で突き進むハイトーンボーカルはご愛嬌ものとしても、メンバーのテクもなかなかのもので、特に音色の豊富なギタリストの仕事は一聴の価値あり。

クサレポイント

この綴りで「エア・アパレント」と読ませるらしいこのバンドの次作品はMetal Bladeからリリースされた。こちらにはあのサイモン&ガーファンクルの"The Sound Of Silence"のカバーがあり、当時話題になったものだ。彼らもまた2002年現在で現役だ。しかし、最近のベテランバンドってWACKENライヴに出るのがステイタスなのだろうか。



EDEN / S.T / 1986

オーソドックスなメタルを聞かせるアメリカ4人組。Enigmaからのリリースであるが、小気味良いハードロックを聞かせてくれる。売れセン狙いの曲が多いのはいたしかたないが、速い曲もしっかり入っていてメタル魂は揺さぶられるだろう。よく言えば安心して聞いていられるメタル、悪く言えばスリリングさには欠けるかも。けれどマニアにも十分及第点だ。

クサレポイント

このバンドのリードボーカルは知る人ぞ知るMichael Henry。彼は元AUGUST REDMOONのメンバーで、このEDEN解散後にはARMED FORCEに加入して伸びやかな歌声を聞かせてくれた。指の部分がカットされたニット製の手袋がなんとも昔懐かしい。これって、脱ぐと小さくなるんですよねぇ(笑)。そんな彼だが後には病に冒され、1998年に亡くなったとのこと。R.I.P...。



LE MANS / On The Streets / 1983

初期Shrapnel RecordsからのリリースでプロデューサーはもちろんMike Verney。彼はバックコーラスでも参加するという気合の入れようだ。ギターは2人いるが、元々は後のこのレーベルカラーである超絶早弾ギターを披露するタイプではなく、オーソドックスなハードロックタイプ。それでも時折泣かせるツインリードを聞かせてくれる。しかしながら"Take Me Down"はギターソロのみの曲。Mike Verneyにこんな曲を入れるように命令でもされたのだろう。

クサレポイント

コーラスも取り入れているし、目つきの悪いボーカリストの仕事も悪くない。ギターだって頑張っているけどイマイチ印象の薄いアルバムだ。やはりピンとくる曲がないのが痛い。