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SAVAGE GRACE / The Dominatress / 1983

SAVAGE GRACEはギターのChristian LogueとベースのBrian East("B.East"と続けて書くと"Beast"になり、それにひっかけて"BEAST"とかかれたTシャツがライヴでの衣装だった人だ^^;)が中心になって1981年に結成されたMARQUIS DE SADEが改名したバンドだ。そりゃ改名したほうがよかっただろう(笑)。その後Metal Bladeの人気コンピシリーズMETAL MASSACRE IIに"Scepters Of Deceit"で参加したあとリリースした5曲のミニアルバムが本作だ。創設者だけあってChristian Logueの気合の入れようは見事。アメリカのバンドらしからぬメロディを前面に押し出したリードギターはすでに彼のオリジナリティを確立している。もうひとりのギター、Kenny Powellの仕事も素晴らしい。残念なのは他のメンバーの力量が彼らに及ばないことだろう。その後、Kenny Powellは自分の野望を果たすためにバンドを脱退してあのOMENを結成した。

クサレポイント

この作品がアメリカのバンドのものだということには驚かされるけど、5曲という曲の少なさもあって、その仕上がりはありがちなメタル、といったところだ。ラストに3連の曲をもってくるところはニクい。



SAVAGE GRACE / Master Of Disguise / 1985

前作からボーカルをチェンジし、おそろしくパワーアップした作品となった。このMike Smithという平凡な名前のボーカリストの貢献は大きい。ワイルドかつDIO型の伸びやかな声質は、この時代のSAVAGE GRACEが好きだと言う人にとってヒーローになりえた。ギター、ベース、ドラムスともにその気合が伝わる。とにかく音がでかくて速い曲が多いながらもメロディが実にしっかりしており、各曲の構成や展開も素晴らしい。このへんはギターの才能が発揮されているのだ。"Lions Roar - Bound To Be Free"で立てられたトリ肌は最後まで収まらないだろう。正統派とはなんぞやの答えはここにあるのだ。

クサレポイント

中袋にChristian Logueのサインがあって、真贋はさておき(笑)見つけたときには大喜びしたアルバムだ。まあ偽のサインなんてする意味がないだろうからきっとホンモノだ! と信じています(笑)。このアルバムのジャケも困ったものだが、実はピクチャー盤もあってこちらはもっと困ったデザインだ^^;。一度探してみてください(笑)。



SAVAGE GRACE / Time For Hard 'n' Heavy / 1986

俗に「くわがたアルバム」と言われる(言わないか)ライヴアルバム。とはいえブートであり、レビューは気がひけるがライヴ音源は貴重なので記事にしておこうと思う。バンド初のヨーロッパでのライヴは1985年9月14日、Metal Hammer誌が主催したドイツのLoreley Metal Festivalに招かれてのことであった。この時点でMike Smithはすでに脱退、またセカンドギタリストとして元AGENT STEELのMark Marshallが加入した。同フェスティバルの出演バンドはMETALLICA、VENOM、WISHBONE ASH、HEAVY PETTIN、WARLOCK、PRETTY MAIDS、TYRAN PACE、RESTLESS、RUNNING WILD、NAZARETHなどそうそうたるメンツ。さてSAVAGE GRACEはというと、これまた選曲が凄いのだが、すべてツーバス系の速い曲ばかりでドイツ人の首をヘシ折ってやろうとする意気込みが伺える。しかし、その演奏はカッチリ決まっているが、なんと言っても問題はChristian Logueのボーカル。彼が歌う"Bound To Be Free"は珍しいが、とにかくヘタ! 笑えるくらいヘタだ。全体としては聞きごたえは満点、ライン録りと思われる音質は良いもののギターが少し薄いのが残念。収録曲は"Destination Unknown" "Sins Of The Damned" "World As One" "Sons Of Inquity" "Fight For Your Life" "Master Of Disguise" "Bound To Be Free"の7曲。

クサレポイント

"World As One"は「新曲だ!」と紹介されているが、後の"After The Fall From Grace"アルバムには歌詞を変えて"Fresh And Blood"として収録されることになる、貴重なテイクだ。



SAVAGE GRACE / After The Fall From Grace / 1986

1985年にMike Smithが脱退し、結局Christian Logueがリードボーカルとなった。Mike Smithに比べてかなり線が細く不安定な声はややパワー不足の感を否めないが、楽曲は素晴らしい。2ndアルバムをさらに進化させたSAVAGE GRACE節が爆発、イントロでツインリードをバシバシとキメてくれる展開はメタルマニアのツボを大いに刺激する。ゴリ押し気味だったこれまでの作品に比べ、メロディアスな部分が前に出ていて、微妙な音楽性の変化は当時論議のあったことだが、今思えばバンドとして成長した証だった、といえるだろう。いつの間にかドラムスもMark Marcumに交代しているが、彼がRAIN PARADEのドラムスと同じ人なのかは未確認。

クサレポイント

タイトルチューンのクサいメロディはライヴではもりあがったことだろう。"Trial By Fire" "Flesh And Bone" "Destination Unknown"なども名曲。"Tales Of Mystery"は彼らの新しいタイプの曲だ。このアルバムは当時日本盤でもリリースされた。



SAVAGE GRACE / Ride Into The Night / 1987

"German EP 1987"のタイトルで日本盤でもリリースされる予定のあった4曲入りミニアルバム。結局日本盤はボツとなり、ドイツ盤のみのリリースとなった。ベースのB.Eastは前作リリース後のヨーロッパーツアー前後に脱退、HEIR APPARENTのDerek Peaceがヘルプ加入して本作をレコーディングした。タイトルチューンこそお得意の速い曲ではあるが、どの曲もChristian Logueのギターに元気がなく、クサいメロディも流れ出ることはない凡百な出来といわざるを得ない。ラストでDEEP PURPLEの"Burn"をカバーしているが、こちらはツーバスにアレンジした笑える"Burn"に仕上がっているが、全体としては聞き手にストレスの溜まる作品となってしまった。ジャケットのオッパイもなんだか元気がないのは気のせいだろうか。

クサレポイント

盟友のB.Eastもバンドを離れてしまい、この時にバンドとしての方向性を失ってしまっている。Christian Logueは有能なギタリストだったのに残念なことだ。