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TORANAGA / Bastard Ballad / 1988

小説「Shogun」の登場人物の名をバンド名にした英国スラッシュ。ボーカルはNWOBHM期にGuardian RecordsからアルバムをリリースしたことがあるMILLENIUMのメンバーだった人だ。4日間で作られたアルバムだそうだが、なかなか良質なパワーメタル〜スラッシュメタルを聞かせてくれる。大音量で楽しめるアルバムだ。パンク系のレーベルからのリリースだったのでこんなひどいジャケットになったのがもったいないくらいなのだ。

クサレポイント

スケールは小さいながらもMaster Of PuppetsのころのMETALLICAの持っていた雰囲気を感じることができる。本作がヒットしたおかげで、次の作品でメジャーデビューを果たし、日本でもそのCDがリリースされることになった。めでたしめでたし。



BRAINFEVER / Face To Face / 1985

Mausoleumからのデビューアルバムで当時のメタルマニアを完全にノックアウトしたBRAINFEVERの2作目。1曲目にスピードチューンというお約束は今回も果たされていて、拳が自然と振り上げられてしまうTRUE METALとなっている。Axel ThubeauvilleとRalf Hubertがスタッフとしてレコーディングのサポートにあたっているのも前作同様だ。"Black Jack"、Sweettalker"、Caught By The Fire"など、BRAINFEVER節が爆発。前作もそうだったけどバシバシと力強くリズムを切り出すドラムスの仕事が素晴らしい。

クサレポイント

ボーカルが変わったか?と感じるぐらい、前作よりもハイトーンを連発している。リードボーカルでバンドリーダーでもあるHorst Neumannはデビュー作では一人レコードの回転数を間違えたかのような、もっちゃりしたオヤジ声で、それが魅力でもあったのだ。



HARPO / S.T. / 1981

ニューヨークを拠点に活動していたバンド。一言で言えばSTYXタイプのアメリカンハードロック〜プログレなのだが、ギターとキーボードの絡みはメタルに馴染んだ耳にも抵抗なく聞ける。時々音程がお留守になるハイトーンなボーカルも愛嬌があってよろしい。キーボードはハモンドの音色も持っているから要チェックだ。ミニアルバムなので5曲しかないのが物足りないくらい。もう少し聞いてみたいと思わせるバンドだ。

クサレポイント

ラストの"Where The Sidewalk Ends"はメロと早口のボーカルがTHIN LIZZYの"Thunder And Lightning"にそっくりだ! いやいや、あれをもっとポップにした感じではあるが。



BANZAI / S.T. / 1983

一曲目、いきなり「バンザーイ!」の掛け声ではじまるこのアルバム、まさにバンザイものである。彼らの曲そのものは実にメロディアスで聞きやすく、ギターとキーボードが織り成すメロディは嬉しくなるほど良質であり、かつクサい。スペインのメタルが生んだ奇跡の一枚!
スペイン国内でポップ〜ブルーズ寄りの2枚のアルバムをリリースしたことのあるソロギタリストのSalvador Dominguezが英国に渡りNWOBHMの洗礼を浴びて帰国後の1982年に結成したのがこのBANZAIだった。ドラムスのLarry Martinは中国系の人だ。マイナーレーベルからのリリースながらスペイン国内での評判は良いものだったらしい。そりゃこれだけクサいメロディで攻められればもうメロメロだろう。

クサレポイント

とにかくこのアルバムのインパクトは凄い!表ジャケもさることながら、裏ジャケを見てひっくり返るだろう。自分たちの曲に勝手に日本語のタイトルをつけてしまっている。日本語という文字に憧れる外国アーティストは多く、彼らもその類であったのだろう。「序曲」、「君の住む街へ」、「真面目にやれよ」、「欲望」、「救世主」、「ハードロック」、「英雄」、「ほっといてくれ」、「友達」、「夜の暴走族」・・・。
タイトルを見て曲を聞けば「そういえばなんとなく暴走族の歌に聞こえる」なんて思えるから爆笑ものだ。「英雄」なんて、かなり劇的な名曲だと思える。しかし、こんな作品はめったにお目にかかれない、即買いモノといえましょう。



BANZAI / Duro Y Patente / 1984

本作ではスケールアップを図りギターとベース以外のメンバーを一新した。元HEAVY METAL KIDS〜UFOのキーボードDanny Peyronelや、作曲もできる男前ボーカル、元TIGERS DE ACEROJOSEのJose Antonio Manzano、ドラムスには同じく元TIGERS DE ACEROJOSEのメンバーだったDavid Bioscaを要しての2ndアルバムはメジャーデビュー作となったのだ。前作が荒削りな、それでもツボを押さえたクサレメタルの名盤であったのに対し、本作はJUDAS PRIESTのDave Hollandの所有スタジオでレコーディングされるなど、そのゴージャスな音づくりには正直戸惑いを覚えるが、Salvador Dominguezの熱いメロディは健在だ。もちろんマニアの琴線をくすぐるメタルとしては余裕で合格点。しかし1stアルバムがすべてにおいて強烈だったマニアには、ブ厚い音の中にも物足りなさも感じるだろう。

クサレポイント

"No Quiero Esperar"や"Duro Y Patente"、"No Pierdas El Tren"は改めて聞くとかなりの名曲だ! ツボを押さえたメロディと、その押さえたツボをこれでもかと刺激するギター。かれがNWOBHM期には英国で暮らしていたこともあって、その先祖たるJUDAS PRIESTやUFOといった英国のアーティストの影響がうかがえる。Salvador Dominguezはメタル界においても過小評価な人だ。



BANZAI / Alive N' Screamin / 1988

1985年にバンドとしての活動を停止させたはずのBANZAIであるが、1988年になって2ndアルバムの全曲のタイトルを英語に変えた本作がリリースされた。さらにその中の4曲については英語バージョン(英訳はDanny Peyronelが担当したそうだ)となっている。おそらく1984年の2ndアルバムレコーディング時に録っておいた英語バージョンを1988年になって引っ張り出してきてリリースした、というのが正解じゃないだろうか。残りの曲は2ndの音源をそのまま使っているようだ。ということで3rdアルバムというより2.5thアルバム、といったほうが良いような感じ(笑)。タイトルからしてライヴアルバムかなぁと期待してたのだが。

クサレポイント

英語で聞く"No Quiero Esperar"もなかなか強烈。やっぱり琴線をくすぐるメロディは聞いててグッときますなぁ。ボーカルのJose Antonio Manzanoは1988年に自らのバンドMANZANOを結成、その後は1993年にスイスのEMERGENCY、1994年にスペインのNIAGARAとバンドを渡り歩いている。BANZAIの創設者でもあったギタリストのSalvador Dominguezは1985年のバンド活動停止後、Danny Peyronelと共にTARZEN (余談だが、当初は"TARZAN"がバンド名だったが名前の使用権の関係で"TARZEN"と改名したらしい。短期間ながらあのLawrence Archerもメンバーだった) を結成して2枚のアルバムをリリースした。現在ではソロアーティストとしてアルバムを残し、ギター教則関係の仕事もしているようだ。
2ndと本作の収録曲の対照は以下のとおり。

Luces → Lights
Crimen Sin Castigo → Vengeance (歌詞も英語)
Grita → Red Light (歌詞も英語)
No Quiero Esperar → Don't Want To Wait (歌詞も英語)
Mr.Hynde → Mr.Hynde
Duro Y Patente → Tough And Powerful
No Pierdas El Tren → Don't Miss The Train
Noche Negra → A Time Of Darkness (歌詞も英語)
Traicion → Betrayal
Se Termino → It's Over