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Apple Years
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- Maybe Tommorow / 1969 ( As "The Iveys" )
- 1964年に結成されたThe Iveysは、5年間の地元ウェールズでの活動の末、結成当時からのオリジナルメンバーは、Pete
Hamだけとなっていた。このころ、The Beatlesが経営するアップル社のプロデューサーであったMal
Evansの目にとまり、彼らはめでたく契約を取り付け、このアルバムでデビューすることとなる。
先行リリースとなった同名のシングル盤のセールスの不調から、このアルバムが発売されたのは日本・イタリア・ドイツなどの数カ国にとどまっている。そのことはこのアルバムを今やBadfingerのコレクターズアイテムの中でもトップクラスの高値を呼ぶレアアイテムに仕上げてしまった。
シングルカットされタイトルトラックや、セカンドシングルであったDear Angieなど、ステキな曲が収録されているものの、アルバム全体のまとまりにはやや欠けており、その才能は開花する前、といった感じだ。
1992年になりめでたくCD復刻され、それまで幻の作品であった本作はようやく一般の人の耳にその貴重な音源が届くようになった。
- Magic Christian Music / 1970
- ギタリストをRon GriffithからJoey Mollandにチェンジし、バンド名もBadfingerと改めて前作のセールス不調を吹き飛ばさんとばかりに再デビューを果たしたアルバム。収録された曲は前作よりもギターのトーンが強く、ややロック色の濃い作品となっている。
1曲目のCome And Get ItはPaul McCartneyの作品で、Ringo Starr主演のコメディ映画「マジック・クリスチャン」の主題歌として彼らに用意されたもの。ちなみにPaul自ら吹き込んだといわれるデモ・ヴァージョンは1997年にリリースされた「ビートルズ・アンソロジー・3」に収録されている。
このアルバムには前作の焼き直し曲を数曲収録したほか、彼らの初期のロックンロールの名曲Midnight
Sun、Rock All Of Agesや、あのWithout Youと並び名曲だと思うCarry On Till
Tommorowなどが収録されている。
- No Dice / 1970
- このアルバムではバンドとして初のシングルヒットとなったNo Matter Whatが収録されている。バッドフィンガーはシングルヒットをねらうバンドとしてアップルで活動していたわけで、アルバム一枚を通しての各曲のバランスやコンセプトといったことには多少欠けるところがあるが、その一曲一曲の出来はなかなか素晴らしいものがあり、メインソングライターであったPeteとTomのコンビネーションのバランスの良さ、それぞれの才能の高さが伺える。
中でもWithout Youは、このあとHarry Nilssonがカヴァーして全世界にヒット、その後も多くのアーティストがカヴァーするなど世代を超えて愛され続けるスタンダードナンバーとなっている。本家本元でありながら、このBadfingerのテイクが一番誰にも知られていないのではないだろうか。事実、前述のアーティストたちもピアノを主体としたNilssonのヴァージョンをカヴァーしているのだ。
他にもライヴでは欠かさず演奏されていたI Can't Take It、Peteの優しいヴォーカルが印象的なWe're
For The Darkなど、ジャケットのセンスもさながら、心の和む佳曲のつまったいいアルバムだ。
- Straight Up / 1971
- このアルバムと前作とを彼らののピークとする人は多い。George Harrisonをプロデューサーに迎えてレコーディングを始めたものの、例のバングラディシュのコンサート
(Badfingerも出演。Here Comes The Sunの演奏シーンでは、Georgeと並んでギターを弾くPeteの姿が見られるのだ。)
のプロデュースが忙しくなったGeorgeは、このアルバムプロデュースの残りの仕事を友人のTodd
Rundgrenにまかせてしまった、というアルバムで、当然ながらバンドとToddとの仲はしっくりいかなかったようだ。
そんな環境下にあっても彼らは実にすばらしいアルバムを作り上げた。彼らの最大のシングルヒットとなったDay
After Day (日本でも当時オリコンで12位を記録) をはじめ、続いてシングルカットし、やはりヒットしたBaby
Blue、シングルカットの予定があったといわれるName Of The Game、Joeyが今でもずっと演奏し続けているSuitcaseなど、捨て曲なしの内容はブリティッシュロックの歴史においても堂々たる名盤だと言える。
- Ass / 1973
- 前作から一転してこのアルバムは地味な印象を拭えない作品となる。アップルからの十分なサポートを受けられず、いいアルバムを作ってもセールスに結びつかないことから彼らにも苛立ちが見え始め、やがて彼らにも一つの転機が訪れるのだ。
このアルバムからのシングルカット曲であるApple Of My Eyesも、タイトルに秘められたアップルへの想いとは裏腹にさしたるサポートもなく、事実このアルバムがアップルレーベルでの最後のアルバムとなってしまうのだ。
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